事業会社側からみたベンダーに期待する行動については、以下の記事にて記載しました。
かつて事業会社の人事部門にて勤務していた時、私も研修・人事サービス・人事システムなどのベンダー選定をする機会が何度かありました。今回は、その際に気を付けていたことを記載したいと思います。
全く初めての場合はできるだけ多くに声をかける
自分、あるいはその会社にとって全く初めてのものを導入することもあると思います。私の場合は、「ハラスメント関連の研修」や「セレモニーの会場選定」などが該当しました。こういった時に、上司や同僚が似たような経験を有していた場合は、その情報も参考にしました。それ以外に、ネット検索によって「あたり」をつけたり・・・と、地道な作業もあるでしょう。
最終的に1社だけを選定するとはいえ、できる限り多くのベンダー様にお声がけするようにしました。なぜなら、全てのベンダー様から返答が返ってくるとは限らないからです。さらに、自分自身がその件についての経験が無いので、ベンダー様からの回答が「適切なもの」なのか「ふっかけられているもの」なのかといった、”勘所”も全く無いので、そういったこともあわせて「学習」するにも、ある程度、場数をふむ必要があるからです。
相場がわかっている場合は比較程度にとどめる
「ここにする」と決めている、あるいは自分自身に「相場感」がある場合は、比較のためにいくつか限定してお声がけすればよいと思います。稟議などを上げる時に、「最初からここだけに決めていたわけではなく、いくつか選定した結果、最も適切な提案をいただいたところだった」ということが明確になっていればよいからです。
複数社にお声がけしていることを最初に伝える
声をかけられる側もわかっているでしょうが、最初に「いくつかの会社にお声がけして選定する予定です」と伝えておいた方が間違いは無いです。はっきりとした返事をするのに時間をいただくことも想定されるので、「他社も含めて選定している」ことは明確に伝えたほうがよいでしょう。
質問の回答を他ベンダーにも伝える
ベンダー様とのやり取りの中で、質問を受けることがあります。その回答は、原則としては質問をしてきたベンダー様にだけ返せばよいと思います。ただ、「その内容は全社に共有しておかないと意味をなさない」場合は、質問をしたベンダー様以外とも共有した方がよいです。
提案しないことも想定する
事業会社側は、「提案を依頼されたベンダーは、それを受注するために例外なく何らかの対応を行う(=何らかの提案書を必ず提示する)」と思っている節があります。しかし、ベンダー様によっては、要件を伺った結果、「提案をしない」という選択をすることもあります。その背景としては以下が考えられます。
- 自社で要件にあうサービスを提供していない
- 予算と見積費用に乖離があり、調整が難しい
- リソース不足のため、仮に受注できたとしても対応できない
- お客様として付き合いたくない
こういったことも想定して、最初は多くのベンダー様にお声がけした方がよいでしょう。そうではないと、「比較ができない」ばかりか「どこからも提案がもらえず、ゼロからやり直し」ということにもなるからです。ただし、「2」と「4」については注意が必要です。
予算と見積費用の乖離
本来は100万円くらいかかるものを、20万円でやってくれと言われれば、どんなベンダー様も引き受けることはないでしょう。ベンダー選定に関して、購買部門が費用削減の面から大きく関与している会社の場合、必要以上にコストカットを要求することによって、「内容は優れているのに社内事情によって選べない」というケースも出てきます。
購買部門は、「コストカットがどれだけできたか」が部門としての評価基準といっても過言ではないでしょう。コストカットにだけ目がいってしまうことがないようにするためにも、「適正価格」を知っておき、それを元に社内調整をする必要があります。
客として付き合いたくない
これは、先日記載した記事の「金曜の夜に依頼して、月曜の朝に何らかの提示(アウトプット)を求める」といったことも含まれるでしょう。
転職エージェントの中では、「この採用担当者は気を付けろ」といったことも出回っていると聞いたことがあります。「客の言うことならば何でも受け入れるのが当たり前」と思っている会社(担当者)に対しては、本来以上に高い金額を提示して、意図的に「選定されないようにする」こともある・・・かもしれません。
期待している提案内容が出ないと、「こちらの意図していることを、全然理解していない」と言い出す方(会社)もありますが、提案を依頼する側と依頼される側では、その件に関する知識や背景の掌握度合には明確な差があります。そのため、適切な情報を適切なタイミングで提供し、場合によっては何度か説明や意識合わせを行いましょう。それが、ベンダー選定という仕事の肝とも言えると考えています。