最近、ある企業が主催するオンラインセミナーに申し込んだところ、申込を行ってから数日後に参加を断られるという経験をしました。その理由は「弊社ビジネスとの親和性の高い同業他社様のご参加はお断りさせて頂いております。」というものでした。このような参加制限は、業界内での情報漏洩を防ぐための措置として理解されることが多いですが、果たしてそれが本当に必要でしょうか?
同業他社を排除する意図
同業他社を排除する理由として、競争上の優位性を保つためという考えがあります。企業は、自社のノウハウや戦略を他社に知られたくないという思いから、同業者の参加を制限することがあります。しかし、実際にはこのような制限がどれほどの効果を持つのでしょうか?
ノウハウの持ち逃げを懸念する声もありますが、セミナーで得られる情報は一般的な知識やトレンドに関するものであり、特定の企業の秘密情報が漏れることは稀です。さらに、参加者が得た情報をどのように活用するかは、参加者自身のスキルや経験に大きく依存します。つまり、同業他社を排除したとしても、実際にはノウハウの持ち逃げは難しいと思います。
セミナーの中身の重要性
セミナーの本質は、情報の共有やネットワーキング、そして新たなアイデアの創出にあります。参加申込をしてきた方々の会社名と事業内容を都度確認して同業他社を排除することよりも、むしろセミナーのコンテンツをブラッシュアップすることに注力すべきです。これにより、仮に同業他社が参加しても、参加者全員が一定レベルで満足できるセミナーを実現することが可能です。
同業他社を排除することで、参加者の多様性が損なわれ、セミナーの価値が低下する可能性があります。多様な視点を持つ参加者が集まることで、より深い洞察が得られ、参加者全員が成長できる機会が生まれます。競争を必要以上に意識しすぎることが、どれだけの効果をもたらすのか、個人的には疑問を持っています。
参加者のニーズに応える
そもそも、参加者がセミナーに参加しようとする理由は何でしょうか?情報を得たい、あるいは新たな人脈を築きたいというニーズがあるからです。情報を得ることだけにフォーカスするのであれば、セミナーに参加せずともネット上での調査や書籍を読むことで十分です。しかし、セミナーが有する価値の中には、参加者同士のネットワーキングやコラボレーションの機会があります。これこそがセミナーが持つ本来の目的であり、参加者が求めるものではないかと思います。
本来の目的に立ち返る
セミナーの参加制限は、短期的には企業の利益を守る手段として機能するかもしれません。その一方で、(大げさかもしれませんが)業界全体の発展を妨げる要因となる可能性があります。参加者が「参加してよかった」と思えるようなコンテンツを提供することにフォーカスするべきではないでしょうか?
また、どちらかといえば自社サービスの宣伝・告知を目的として行っているセミナーで話している内容が、果たして「ノウハウとして門外不出」なのでしょうか?もし、そうであるならば、むしろ一定の費用を徴収して、参加のためのハードルを高めた方がよいでしょう。参加者が真に価値を感じる内容や機会を提供することが、セミナーの本来の目的であるはずです。
必要に応じて同業他社との交流を促進し、参加者全員が得られる価値を最大化することが重要です。セミナーは、情報の共有や新たなアイデアの創出の場であり、参加者同士が共に学び合う機会であるべきです。競争ではなく共創の時代において、同業他社との関係として「一方的な排除」が果たして有益に機能しているのか?そして、それが適切な対応なのかといったことは見直す必要があると感じています。
セミナーの目的や内容によっては、一定の属性による制限を設けた方がよいセミナーがあることは理解しています