人事評価制度において、MBO(Management By Objective and self control)と最近注目されつつあるOKR(Objective and Key Result)の二つの考え方が出てきています。双方が何なのか・・・というのはともかく、きちんと理解しようとすると、「何かが違うけど、なんだか区別がつかない」と思えてきました。そこで、自分の頭の整理も兼ねて、この二つの特徴や違いを取り上げます。
そもそもMBOとは?
MBOはManagement By Objective and self controlの略称で、日本語では「目標管理制度」と訳されています。メリットやデメリットについては、こちらの記事でもまとめています。
デメリットのほとんどは、誤った運用法が原因のものが多いかと思います。「ノルマ管理ツール」の代表みたいにとらえられてしまうのは、成果にばかり焦点をあててしまっているのが原因でしょう。また、目標から外れる業務はやらなくなるといったことも、運用で十分回避できます。例えば、その時点で途中で目標設定の調整を行ったり、業務に対する姿勢(≒コンピテンシーとも言えます)の評価として加点するといったことです。
また、目標を設定してから1年後(あるいは半年などの評価サイクル毎)に達成度合いを確認・評価するだけではなく、以下のことを含めて設計・運用することが肝要です。
- 定期的に何度かレビュータイミングを設ける
- 評価に対するフィードバックセッションを必ず実施する
- 評価は複数段階評価とする。また、評点の根拠説明や評点のレベル感を調整する「評価者会議」を行う
- 上記を行えるようにマネージャーに対する評価者研修やフォローアップを人事部門が継続的に行う
次にOKRとは?
Objective and Key Resultの略称で、日本語では「目標と主な結果」という訳になります。もともとはIntel社が先駆者で、Google社がOKRを活用し始めたことによって注目されるようになったとも言えます。
一言でまとめると、OKRとは・・・
全階層の従業員に、企業にとって重要で野心的な組織目標を、効率的かつ有効に共有し、その達成に向かって全力を集中させるためのツールです。
全社員の目標を一つ一つ上位階層にたどっていくと、最終的には「会社としての目標」につながるようになっています。目標を立てる時およびその環境としては、以下の点を網羅している必要があります。
- 限界を超えることがそもそもの目的である。そのため、不可能ではないが達成するには困難な高いレベルに設定する
- 達成率が60%~70%程度となるくらいが理想的(達成率が高い=難易度の低い目標)
- 定量的で測定可能である
- 全ての目標(社長・部門/チーム単位・個人レベル)が社内で公開されている=誰もが知ることができる
- 四半期(比較的短期間)ごとに目標を設定・評価する
OKRにおける達成度合いがそのまま報酬(賞与金額・昇給%)につながるわけではありません。目標の評価は、達成度合いを何らかの形で数値化(5段階評価や達成率<%>など)すると同時に、評価者はその根拠が説明できることが求められます。
OKRとMBOの違いって?
「MBOとは何か?」「OKRとは何か?」というそれぞれについて記載されたサイトは多くあったのですが、少なくとも私にとって「評価サイクルの違い」以外は、MBOとOKRが混同していました。
なぜなら、MBOを導入していた事業会社で人材開発担当者だった際に、
- 実際の能力よりもちょっと高い、ストレッチした目標を設定する
- 部門の目標を元にそれを個人レベルの目標として展開する(部門の目標は当然、会社そのものの目標につながっていた・・・はず)
といったことを話していたからです。目標達成率は90%台だったゆえ、「ストレッチ」の度合いはだいぶ異なっているものの、OKRの内容を知った時に「それって(MBOと)何がちがうのか?」が腹落ちしていなかったのです。
両者の共通点や相違点は?
そこで、Web検索をしてみました。MBOとOKRの違いについては英語で書かれたものしかなく、しかもそれほど参考文献も多くなかったので、比較表を作成しました。それがこちらになります。
出典:「Difference between Management By Objectives and OKRs (Objectives and Key Results)」の一部を翻訳・追記
MBOでは、数値的な指標で評価する定量以外にも、「どういう状況・状態になっているのか」といった数値では表しにくい定性による評価も使われています。以前、勤務していた事業会社でも、定量と定性の両方の目標を複数設定していました。
一方、OKRの場合は、定量のみとなります。また、その目標そのものの達成に焦点があたっているのがMBOですが、OKRは目標設定時の能力よりも「ストレッチする」ことが重要となっているため、達成率も60%~70%くらいになるような目標としています。そのため、仮に達成率が80%だった場合は、目標そのものが「甘い」ということになります。
どちらが良いのか?というよりも、どうやって運用するか
世の中のトレンドとしてはOKRに注目されており、MBOではビジネスのスピードについていけないし、ノルマ管理になってしまう・・・と言われることもあります。一方、OKRならそれは全て解決できるのでしょうか?OKRは達成率が60%~70%となるような、難易度が高い目標のため、「どうせ達成できないならほどほどに」といったケースも全く発生しないとは言い切れません。つまり、制度そのものに万能性をもとめるのは違うのかなと思います。
評価制度そのものの内容も重要ですが、それを支える運用や人事部門の支援の実行の方が重要だと考えています。
評価制度の設計・運用については、1回~数回の「個別コンサルティング・ブレストパートナー」や、ある程度の時間をかけて行う「人事プロジェクト支援」といったスタイルでご相談を承っております。
私自身の今までの経歴などはこちらに記載しています。詳細に関しては、お問い合わせフォームからお願いいたします!
<追記>
MBOやOKRも含んだ評価制度に関して「@人事」編集部から取材を受けました。