研修は受講日当日に受講するだけで、すぐに業務における成果が得られるものではないです。もし、そうであるならば、世の中でここまで人材開発の重要性がうたわれたり、人材開発会社がビジネスを継続しつづけることはできないはずでしょう。
研修は上司の役割が最も重要
研修というと、研修内容(アジェンダ)と講師が重要だと思われがちですが、最も重要なのは上司の研修に対する関わり方です。これが、受講効果に大きく影響します。まず、どんな内容の研修を受講するのかを上司が掌握していないというのは問題外です(笑)。
「あれ?今日いないの?あ、研修だったけ~」
というのは、マネジャーとして失格・・・。
研修前後で短時間でもよいから面談を
研修を受講する前と研修を受講した後のそれぞれに、時間は10分くらいといった短時間でもいいので、受講者とその直属上司で面談を行うことを勧めます。
研修を受講する前は、例えば以下の内容が考えられます。
- 研修を受講する目的・内容の確認
- 何を学んでくるつもりなのか(受講者本人から)および、何を学んできてほしいのか(上司から)のすりあわせ
- 事前課題に対するフィードバック
- 事前課題とは、受講者にとってあまり負担にならない程度のもので、かつ、受講目的が認識できるようなアンケートや課題。例えばコミュニケーションスキル研修を受講するとした場合、「業務上、他者とのコミュニケーションに関してどんなところで困っているのか?」といった質問に対して受講者が記載する。その回答内容に対する上司の見解が、事前課題に対するフィードバックとなる。
研修受講後は、以下の内容が考えられます。
- 受講内容に対する感想
- 業務でどんなところが活かせるのか
- 上記に対する、上司からのサポートとしてどんなものが必要か
上記の面談を必ず行うための仕掛け
上司が自主的にスタッフの研修受講に対して、こういったサポートをしてくれたら完璧ですが、実際にはそうはいかないでしょう。そのため、受講者に対して、上司のフィードバックをもらうことを盛り込んだ事前課題を設定して、面談を持つように仕掛けをつくりつつ、受講者の上司にも(事情やその背景を明確にしたうえで)面談を持つように促すといったフォローは、事務局(=人事部門)が行うべきだろうと思います。
研修の共通言語化
このように、研修を単なる「イベント」に終わらせず、業務に直結したスキル育成のきっかけの機会とするためには、研修そのものが共通言語化していることが成功要因の一つです。共通言語というのは、組織のビジョンであったり、考え方、歴史、メソッドといったものです。
研修そのものが共通言語になっていると、上司から「今度プロジェクトをリードしてもらうことになるし、そろそろマネジャー基礎研修を受けた方がいいんじゃないか?」といった話をされた時も、とてもスムーズかと思います。上司自身も数年前に「マネジャー基礎研修」を受講していれば、その内容を理解(+実感して実践)しているものについての話なので、上司は説明しやすし、部下にしてみても納得感は高いでしょう。
もちろん、「マネジャー基礎研修」そのものは、環境やビジネスの変化に応じてコンテンツのアップデートはされているべきです。ただ、大枠の研修目的や受講による期待結果については定着しており、長年展開されている研修であることが、研修の共通言語化に求められることです。
そのためには、研修体系を「見直し」という名目であれこれと毎年変更して、社員に対して浸透していないというのは意味のないことです。しっかりした土台をもとにした研修体系の構築と、その長期的な運用が、適切な人材開発には必要だと思っています。