今年に入ってから3年半ぶりに香港に行きました。今回、12回目(!)の香港だったのですが、人生で初めてLCCを使いました。LCCを使った感想とそこからの気づきについて取り上げたいと思います。
LCCとは何か?
LCCとは、ローコストキャリア(Low Cost Carrier)のことで効率的な運営により低価格の運賃で運航サービスを提供している航空会社のことです。低価格ゆえ、全てのサービスを提供するわけではありません。具体的には、機内食は提供されないか有料、チェックイン作業をセルフサービスで行うこともあります。また、座席指定が有料、機内持ち込み荷物の量が厳密に制限され、預け入れ荷物は1個から有料であることも多いです。JALやANAのような一般的な航空会社(フルサービスキャリア)であれば、当然のように存在しているサービスを「削ぎ落とす」ことによって、航空運賃が安くおさえられています。
空港のターミナルもLCC用の別ターミナルであったり、搭乗ゲートがとても遠かったり、バスに乗らないといけないケースもあります。これは、空港設備利用料をおさえることによって、運賃に反映させ(安くする)ています。さらに発着時間が、夜中や早朝といった「空港があまり使われていなかった」時間帯であることも、それによる空港設備利用料をおさえることにつながっているようです。
LCCを選択した背景
先日、香港に行く際に初めてジェットスタージャパン航空を利用しました。これは、オーストラリアのカンタス航空が設立したジェットスター航空のグループ会社です。今回は、1月初旬の3連休で、かつチケット購入時期が遅かったこともあり、どこの航空会社の価格も通常よりもかなり高すぎたというのがきっかけでした。(香港に行くときは、個人的にはキャセイパシフィック航空を選ぶことが多いです)そのため、初めてのLCC搭乗となりました。
LCCといってもいろいろあり、しかも香港までの便はかなり選択肢が多かったのですが、現地での滞在時間(≒出発・到着時刻)やどうしても削れないオプションも含めた運賃価格などを総合的に考慮して、ジェットスタージャパンを選びました。
これは、今までのフルサービスキャリアの中から比較して選択するときとは異なる動きでした。飛行機の出発時刻はともかく、サービスの内容に多少の違いはあれど、そのサービスが無いというわけではないので、いわゆる航空会社の「アライアンス」を軸に検討することがほとんどでした。
航空会社の選定方法が従前とは全く異なる
しかし、LCCの場合は、そもそもの運賃は「座席代」のみであることが多く、それ以外のあらゆることはオプションとして別料金になっていました。さらに、そのオプションは全部がパーツになっていて組み合わせる形式もあれば、いくつかのオプションがまとまっていて、そのグループの中から選ぶような形式になっている・・・とLCC航空会社によって異なっていました。イメージとしては、パッケージになっている生命保険に入るか、それぞれのオプションを組み合わせて「オリジナルの」生命保険をつくる違いのようなものです。
同じことであっても正反対の反応
座席は決して広くはなかったものの、座ったら前の座席に膝がつくような狭さではありませんでした。片道4時間~5時間くらいだったので、特に支障はなかったです。機内エンターテインメント(映画や音楽など)もないことは事前に理解していたので、買ったものの読んでいなかった本を読了することができたのは却ってよかったのかもしれません。ただし、その本が結構な分厚さだったので持ち運びに若干影響がありましたが(笑)。機内食はオプションでつけたのですが(というより、サービスとして含まれていた)、チキンカツカレーやどら焼きも結構おいしかったです。
フルサービスキャリアで同じようなことがあったら、どうしていたでしょうか?例えば、機内エンターテインメントの機器が何らかの事情で故障していて観られなかったら、クレームをつけていたかもしれません。機内食がチキンカツカレーとコーヒーだけで、ソフトドリンクすら有料だとしたら、次にその(フルサービスキャリアの)航空会社の飛行機に乗るでしょうか?
価値観は間違いなく多様化している
同じことなのに、その前提条件や価格が異なっていると、それを当然のこととして受け入れる(しかも賛辞の気持ちもある)こともあれば、クレームを言いたくなるような不満を覚えるかもしれないのです。ファーストクラスやビジネスクラスのサービスを受けることに、何よりの喜びに感じる、あるいは、欠航した時のフォローが弱いからLCCは使いたくないという人もいれば、飛行機は移動手段にすぎないから安くいければ全く問題ない、という人もいます。同じLCCに対する反応や考え方は、人によって異なると言えます。
LCCが設立され、それがビジネスとして成り立っているということは、世の中の価値観が多様化していることの現れなのだろうなということに改めて気づきました。また、価格が物やサービスの価値観に少なからず影響を与えているという最たる例かもしれません。これは、人事の中でも同じことが言えると思います。いわゆる、複業を認めるといった流れなども、まさにそうでしょう。
今回、「何となく避けていた」LCCを使ってみたことによって、自分が今まで経験のないものを受け入れてみることはそれほど難しいことではなく、それによって失うものは無く、むしろ気づきや得るもののほうが多いことを実感しました。