Global HR Forum Japanという今年で3回目となるセミナーに先日(8/3)出席しました。セミナーそのものは終日だったのですが、私はスケジュール上、午前中に以下の2つのセッションに出ました。
- 世界から見る、日本企業・日本人材の現在地と課題~IMD世界人材調査からみえるもの~
- 日本企業がHRDで世界に勝つために必要なこと~世界最大HRDイベント「ATD」からの考察~
どちらも複数の方が登壇するパネルディスカッション形式だったのですが、その場の流れで適当に・・・という感じではなく、アジェンダにそってディスカッションが行われていました。事前に打ち合わせがしっかりされた構成だったと思いました。参加費無料だったのですが、軽食が準備されていたり、会場のファシリティーやアジェンダの組み立て方など今回のセミナーは有料であっても参加に値するすばらしいものでした。
・・・・と言いながらも、午後は仕事もあるので切り上げてきた。何気に軽食も用意してあったし、登壇者間でしっかり事前打ち合わせはしているけど、セッションの展開が内輪受けにならないように構成されていたので、時間をつくって参加してよかった。
— Nagami_Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) August 3, 2018
両方のセッションの内容にふれつつ、日本企業のが世界で「勝つ」ために最初に行うことは、「定義する」ことであるという点について述べたいと思います。
国際化とグローバル化は異なる
「国際化」と「グローバル化」は混同しがちですが、実際に指すものは異なっています。「国際化」は国と国がどのように関っていくのかということであり、国境があることが前提となっています。一方の「グローバル化」は、世界を「一つの土台」としてとらえた上で、共通ルールや価値観を構築していくことではないかと理解しています。
「世界人材調査」という調査の中で、日本は61カ国中31位だったようです。この調査は、以下の3つの軸で調査しているようです。
- 人材に対する投資・育成
- 人材を国外からひきつけ・維持している魅力
- 現時点での人材面における準備度合い
この調査によると、アジア諸国の中では香港(12位)、シンガポール(13位)についで3位でした。その3カ国で比較すると、「人材の維持・獲得・訓練は大事」であるという認識度合いが日本は高い一方、上級管理職の国際経験が足りていないということが明確だったようです。
外部から人材を受け入れるか育成するか?
香港・シンガポールと日本では大きく異なる点があります。前者は、国/地域外から人材を外部から積極的に取り込んでいこうとしており、日本はどちらかといえば、国内の人材(日本人)を育成していこうとするスタンスの違いがあります。これは、どちらが良い/悪いというものではなく、単なる「戦略の違い」ではありますが、その一方でどちらに軸足を置くのか、というのことは確定し、それに則した対策を取る必要があります。
(私見)日本国外から積極的に受け入れる場合
グローバル化を日本国外から人材を積極的に受け入れることで実現・推進していく場合は、以下のように・・・
- 海外から居住しやすい制度を政府が設け、それを企業が多用できる仕組みを作る
- 日本語ではない言語で教育がうけられる学校を増やす、あるいはそれを促す税制優遇策を行う
など、現在、日本に住んでいない外国人が「日本に住みたいと思うだけではなく、日本で働きたい/働ける」環境をつくることを優先することになるでしょう。どちらかといえばハード面に注力を置くことになるのかもしれません。
(私見)国内の人材を育成する場合
反対に、国内の人材を育成することでグローバル化を推進していく場合は、以下の施策(案)が考えられます。
- 学校教育や企業研修において、標準言語としての英語を強化する(アメリカ英語、イギリス英語といった地域による発音や表現にこだわらず、文法的に正しく相手に伝わることを主軸におく)
- この課題はどうやって解決していけばよいのか、何が困っていることなのかといったデザインシンキングを活用する
- 国内外で、文化や環境が異なるメンバーの中でリーダーとして行動できる機会を増やす
国内の人材に対して、文化や環境が異なるメンバーの中でリーダーとして行動できる機会と、そのためのスキル(行動力)が身につけられるようにすることが優先されるでしょう。こちらは、ソフト面の施策のほうが多いかもしれません。
世界に「勝つ」とはどういうことか?
両方のセッションは、アジェンダのアプローチの仕方は異なっていたものの、「日本企業のこれからの在り方」という点ではテーマが重なっていたと感じました。両方のセッションを聴いて思ったことは、日本企業が世界で勝つために必要なことは何なのかを考える前に、そもそもの「勝つ」とはどういう状況なのかを定義するのが先決だろうということです。
何に対することなのかを明確にかつ共通認識として持っていないと、何をやっても途中でぶれやすくなるからです。
ATDから考察する「勝つ」ためのリーダーの在り方
日本企業のこれからの在り方においてリーダーの重要性は、さらに増していくでしょう。学びの触媒になることがリーダーとしての役割であり、他の人を助けることによって評価される・気がついた時に教えあう文化をつくりあげていくことは、間違いなくこれからの時代に求められることだと思います。
ただ、そういったリーダーを育成し、経験する機会の提供にフォーカスするのか、そういった人材を国内外から受け入れることにフォーカスするのでは、とるべき戦略として異なる部分があるはずです。
5月にサンディエゴで開催されたATD ICEにおける各スピーカーの発表でも、XX社がやったことによって成功した「ソリューション」というような事例の紹介もあれば、今後さらに検討を進めていくべき「仮説」レベルのものも多く取り上げられていたようです。リーダー育成に関しても、土台として変わらない部分もあれば時代によって変化していく部分もあるだろうと思います。
「日本企業が世界で勝つ」ということの「真の目的・意味合い」を明確にして、それを共有してからではないと、何かを着手したとしても途中で目的を見失ってしかるべき結果は得られないだろうと思います。「共有」の範囲は、一番小さい単位では企業レベルですが、本来は国レベルでのことなのかもしれません。