いわゆる中途採用といえば、人材エージェント(以下、エージェントと記載)経由での応募か企業のWebサイトから直接応募することがほとんどだったと思います。直接応募というと、応募者からのコンタクトが最初というイメージですが、それ以外にも企業側から最初にコンタクトを取ることも増えつつあります。
ダイレクトソーシングとは
人事の中では「ダイレクトソーシング」という用語がだんだんと定着しつつあります。文字通り、「企業による直接採用」という意味合いです。各社のWebサイトには「採用情報」というコーナーがあり、そこに現在空席(あるいは空席予定)のポジションの募集要項を掲示しているところはかなり多いと思います。これはこれで必要なものですが、それ以外に「人材プール」を用意しているところも段々と増えてきました。
「人材プール」とは、以下のようなケースの際に、(潜在的な)候補者が履歴書や職務経歴書などをアップロードするためのサイトです。
- その企業に興味はあるが、すぐに転職したいというわけでない
- 希望するポジションが現時点で募集していない
- どのポジションが自分にとって適切なのか明確ではないが、その企業には興味があるのでそれをアピールしたい
この「人材プール」の情報を人事担当者がみて、直接コンタクトをとるケースも増えております。これは企業側にとってもメリットがあります。
- ここに登録している=その企業に高い関心がある ということなので、選考した結果オファーを出しても辞退されるケースが通常より低い
- 空席や新設ポジションが発生した際に、すぐに候補者を選出できる。そのため、選考期間の短縮化が可能となる
- エージェント経由だと発生する紹介料が全く発生せず、0円となる
タイミングではなく適切な人材を外部から獲得したい
なぜ、企業はダイレクトソーシングに力をいれるようになったのかを考えてみたいと思います。そもそも、中途採用を行うタイミングというのはどういう時でしょうか?
- 新しくポジションが新設(増員)された
- 誰かが異動・休職・退職するため補充する
この2つがほとんどではないかと思います。つまり、企業側のニーズが発生した時とも言えます。応募者側からみると、「自分が転職を検討している時に、興味がある企業にコンタクトが取れないor取ったとしても募集していないのでどうしようもできない」「転職を検討している時に、ニーズがある企業の中から選択するしかない」ということを意味しています。
これは企業側からすれば「自分たちのニーズが発生した時点で、”転職を検討していて”、”自社に興味・関心が高く社風や部門の雰囲気に馴染みやすく”、”ポジション・給与レンジや役職が合う”人を探し出す」という、とてもハードルの高いタスクでもあります。
ある一時点の状況・環境から適切な人材を探し出すことや、適切なポジションを見つけるのは、双方にとって「ハードルが高く」「博打要素も高い」ものでしょう。ダイレクトソーシングにおける「人材プール」の仕組みは、タイミングに関係なく、常に適切な人材とコンタクトをとれるようにしておきたいという企業側の気持ちと、自分にあうポジションがあったら知らせてほしいと思う(潜在的)応募者の気持ちの両方から見て、適切な解決策になり得るとも言えます。
「人材プール」を自前で持たない方法もある
「人材プール」は独自システムであれパッケージソフトウエアであれ、自前で持っている前提で記載していましたが、これを持たずに同等の効果をもたらす方法もあります。具体的には、LinkedIn、ビズリーチ、WantedlyのようなSNSを使うことです。
こういったSNSは、個人アカウントだけではなく採用担当者(部門)用に法人向けアカウントも用意しており、それを持っている企業もかなりあります。法人向けアカウントは、たいてい有料です。(潜在的)応募者は、個人アカウントにてユーザー登録し、職務経歴などを記載・公開します。そうすることによって、企業からコンタクトされたり、反対に直接コンタクトを取ることができます。
「人材プール」の場合、各企業ごとに登録する必要がありますが、このようなSNSの場合は一度で複数の企業の「人材プール」に登録したのと同じことになります。また、企業側からすれば、「自社のことを知らない」「自社の人材プールに登録するほどの関心はない」方々にも声をかけることができるので、それをきっかけに興味・関心を持ってもらうこともできます。つまり、本当の意味での「潜在的な候補者」を見つけることができます。
私が勤めていた事業会社では、「人材プール」とLinkedInの併用でした。特に「人材プール」の方は、誰がどのポジションに応募してどういう選考状況なのかもわかるため、社内においても情報共有が可能となっておりました。
どちらもダイレクトソーシングのための「チャネル」という位置づけで、実際にこれによって採用候補者を抽出していました。もちろん、このような「チャネル」は作るだけは意味がなく、(潜在的)候補者の情報が登録されており、かつ実際に活用していくことが重要です。
<2016年10月23日追記>採用面接の質問などから、企業の採用本気度合いがわかります。これは、どう考えても本気で採用しようとは考えてないだろうなという状況・質問内容を記事にしました。