CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)といったタイトルが日本企業でも使われるようになり、企業のポジション・役職の一つとして定着しつつあると思います。それに呼応する形で、人事に関する最高責任者=最高人事責任者もあるべきでしょう。実際、アメリカなど海外企業ではそういったポジションはすでに存在しています。
最高人事責任者の役割
最高人事責任者に求められる役割とは何でしょうか?数年前の記事ですが、これはフレームワークとして適切ではないかと思います。
「人事の役割」を定義したフレームの代表的なものの一つが、『MBAの人材戦略』で著名なミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が提唱した以下4つの分類です。
- 戦略パートナー(Strategic Partner)
- 管理(アドミ)のエキスパート(Administrative Expert)
- 従業員のチャンピオン(Employee Champion)
- 変革のエージェント(Change Agent)
引用:「人事の役割」とは
バックオフィスとしての人事部門の役割はもちろん必要ですが、それ以外にも企業戦略に対して人事の側面からサポートするパートナーとしての役割も求められます。「人事は経営層の戦略的パートナーでなければいけない」という考え方に対して、異論は全くありません。ただし、これは「戦略的なアクションがとれ」ればよいというわけではなく、人事部門のスペシャリストであることが土台としてあることが重要です。
「最高人事責任者(CHO/CHRO)」3分でわかる最新人事コラムに、「『従業員に密着した人材マネジメント』も欠かせない人事機能の一つ」と記載されているとおり、従業員を見ていない/上層部ばかり見ているのは論外だと思います。(どこかを勘違いしている人事スタッフって少なくないです・・・)従業員の声に耳をかたむけ、会社と従業員との間をつないで、良好な関係を構築できるようにすることが人事部門に求められます。
また、人材開発や人事制度などの導入・変更は、それを行うことが目的ではなく組織の変革を行うことで、マーケットで自社の強みを発揮していくためのベースとなるものです。そういった組織変革のリードをとるのは人事部門になるでしょう。(人事部門以外の)自分たちは人事部門が行うことを、ただ傍観していればよい、ということではないのは言うまでもありません。
CHOという単語は使えない?
ところで、最高人事責任者は英語で表記すると=Chief Human Resource Officerとなります。そのため、略称はCHOではないかなと思っていました。その一方、最近は「CHRO」というように4文字であらわされるのを多く目にするので、その疑問をそれとなくTwitterにつぶやきました。
CxOの人事版は、CHOかと思うけど、最近CHROと言われるのはなんでだろ?三文字のほうが統一感があると思うけど。
— Nagami_Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) June 13, 2017
そうしたところ、「(CHOは)株式会社パソナの商標登録になっているので使用できないのでは・・・」というレスをいただきました。どういうこと?と思って調べてみたところ、やはりそのように記載しているサイトの文書を発見しました。
それでは1次情報にあたってみよう・・・ということで、特許庁のWebサイトにて確認してみました。
ほんとだ・・・。日本CHO協会という団体もありますが、ここのサイトにははっきりと「CHO(チーフヒューマンオフィサー)は日本CHO協会の運営主体である株式会社パソナの登録商標です」と記載されておりました。
つまり、対外的ポジションとして「CHO」と記載すると、場合によっては、登録商標の権利侵害になるということですよね?
なにこれ??
それでは浸透しないだろう。たぶん、パソナはこれを登録することで、何らかの収入減にしようとしていたのかなと邪推します。
ちなみに「CFO」についても確認してみました。CFOは一般社団法人日本CFO協会が商標登録をとっています。この団体は一般社団法人で、かつ国際的なCFO団体ともつながりを持っているらしく、一企業が登録商標をもっている「CHO」とは全く異なる位置づけです。
CHROは一般的なタイトルなはず
今後のことを考えると、最高人事責任者に関するコンセプトは定着しつつあるし、そういうポジション名も出てくるでしょう。その時は、上記の事情もあるのでCHROという略称が使われるでしょう。また、「CHRO JD」というキーワードで検索すると、いろんな会社のJD(Job Description:職務記述書)などが表示されるので、「CHRO」の方が一般的になりつつあるのかもしれません。
「CHRO」については、どこかの企業が商標登録出願をするなどということはしないでほしいし、仮に申請があっても特許庁は自信をもって却下してもらいたいと個人的には切に願っております。