事例:課題解決のために適切な人事システム選定支援

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この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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人事システム導入支援だけではなく、人事システムに何らかの課題や問題点を認識しつつも、そもそも何を選定・改善すべきなのか、そして、その課題解決のためにどこから着手してよいのかわからない、といったことに対応するケースが増えています。本記事では、そういった人事システム選定支援の取り組みとその成果について取り上げます。

どのシステムを選定すべきなのかは、企業規模や何を人事システムで実現させたいのかといったことによって異なるものであり、最初から「回答」があるわけではありません。

背景・課題

この企業は、長年にわたり外資系ERPシステムを使用していましたが、法改正に伴う追加開発が増え、コストが高騰していました。また、システムの機能そのものが自社のニーズに合わなくなり、業務効率が低下しているという課題を抱えていました。さらに、社内にはシステム選定に関する専門知識を持つ人材が不足しており、適切な判断が難しい状況でした。

人事プロジェクト支援内容

月2回(プロジェクトとしての支援期間は半年)の打ち合わせ、およびベンダー各社との打ち合わせへの同席を通じて、主に以下の支援を提供しました。

  • 要件抽出支援
  • RFP(提案依頼書)の作成支援
  • 候補ベンダーとの打ち合わせ同席
  • 最終選定のための提言

要件抽出支援

企業が新しいシステムで実現したい要件を抽出し、具体的なニーズを整理しました。また、現行システムで実現されている業務についても一覧化して、優先度を設けてもらうことで、システム選定の基準が明確になりました。

要件を抽出する前段階の作業として、検討方針を定めました。世の中には色々なシステムが存在しているため、何も方針を決めずにあれこれとみていくと、「良さげなところ」だけに目がいってしまい、結果として何も決められないからです。具体的には「一体型システム」と「複数システムの組み合わせ」の例と、公開可能な範囲での他社での実装例などを紹介し、うっすらとイメージをもってもらいつつ、そのイメージをもとに、以下の検討方針(抜粋)を設けました。

  • クラウドツールを軸に検討し、アウトソーシングはスコープ対象外
  • 202X年に人事制度を改定があるため、制度変更に対応しやすいこと

RFP(提案依頼書)の作成支援

抽出した要件も含んだベンダーに送付するRFP(提案依頼書)を作成しました。この文書は、候補ベンダーに対して具体的な要求を伝える重要なツールとなります。どういった内容を記載すべきなのかといった目次(アジェンダ)と記載例を示しつつ、中身は企業側で作成してもらい、その内容をレビューすることで完成させました。

候補ベンダーとの打ち合わせ同席

候補となるベンダーとの打ち合わせに同席し、認識のすり合わせや提案内容の評価や質問を行いました。これにより、ベンダーの理解度や提案の適合性を確認しました。選定に際して外部コンサルタントが同席していると、「冷やかしではなく本気で選定を検討している」ことがベンダー側にも伝わる効果があります。

また、企業側がどんな質問をするのかといったことから、何を重視しているのかを再確認したり、あるいは今まで認識していなかった重視すべき点が明確になることもあります。そのため、スケジュールが調整できる範囲で、同席するようにしています。

最終選定のための提言

社内稟議を上申する際に、弊社の意見を反映した文書を作成しました。選定の経緯や推奨システムの理由を客観的に示すことで、企業側の判断をサポートしました。

この選定に際しては、提案書・見積書を見ただけではどちらがよいのか甲乙つけがたい、というものではなく、どちらかといえば「一目瞭然」といえるものでした。とはいえ、それは一緒に選定を行っていたからわかるものであり、どうしてそのような提言をしたのかといったことを客観的に示すことを心がけました。

支援結果

最終的に、新しい人事システムとして日系ERPを選定しました。この選定は、企業のニーズに最も適した機能を提供するものであり、コスト面でも優位性がありました。企業側からは「システム選定がスムーズに進んだ。特に、要件の整理やベンダーの言っている内容に対しての咀嚼が助かった」とのフィードバックをいただいています。この事例は、企業が抱える人事制度の課題に対して、適切なシステム選定がいかに重要であるかを示しています。

システム選定に際して、自身の担当業務がどうなるのかといったことではなく、「今後どういうシステムを使って、何をしていきたいのか」という一段上の視座をもって、軸をぶらさずに検討を進めてくださった企業側の対応も成功要因の一つだったと思います。

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