ブレンドラーニングを取り入れることで研修に継続性を持たせよう

ATD
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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以前の記事で、「ブレンドラーニング」を紹介するつもりが、その前段の「E-LearningとLMSの歴史」をふれただけになっておりました。今回こそ、ブレンドラーニングについて6月に開催していた「ATD帰国報告会」にて伺ったことなどについて話したいと思います。

ブレンドラーニングを取り入れることで研修に継続性を持たせよう。それを話す前に、e-ラーニングとLMSの2000年代初頭の状況について
だいぶ時間が経ってしまったのですが、ある研修会社が6月に開催していた「ATD帰国報告会」に出席した際にうかがった、「ブレンドラーニング」についてご紹介します。この「帰国報告会」関連として、既にいくつか.....

地理的な面からアメリカに先進事例が多い

ブレンドラーニングについての定義はいろいろとあるかもしれませんが、「集合(教室)研修とオンラインセッション(バーチャルラーニングとも言う)を組み合わせて実施する研修」のことになります。ATDの開催地がアメリカということもあるかもしれませんが、ブレンドラーニングは、国の中に時差があるくらい国土が広いアメリカで、(必要に迫られてということもあったかもしれませんが)先進事例が多いです。研修全てを集合研修で行うとすると、そのための移動時間・費用などが膨大になるので、現実的ではないという事情があります。日本でも、支店・事業所が全国にあるような企業は該当するかと思います。

反対に、すべてのセッションをオンラインで行うというわけではないです。やはり、直接集まって研修を行った方がよい内容やケースもあるので、その辺の「仕訳け」が肝だと思います。例えば、以下のようなものは、全員がその場で集まらずにオンラインセッションで対応できるでしょう。

  • 参加型(チャット、会話、クイズ)のもの
  • プロジェクトや複数回の研修セッションにおける最初のキックオフセッション
  • 集合研修実施後のフォローアップセッション
  • 知識やハウツーを習得するもの
  • 録画したものを見てもらうようなもの(マイクロラーニングもこのうちの一つです)
マイクロラーニングはお手軽でかつ効果高そう。その実践経験。
ATD人材育成国際会議という、人材開発関連のカンファレンス&展示会が年に1回アメリカで開催されます。だいたい毎年5月中に開催され、2016年はデンバーでした。そこで、最新の人材開発の事例やトレンド情報.....

反対にディスカッションを行って、アウトプットを出すというような形式のものは、オンラインセッションだと、ファシリテーション能力にかなり高いレベルが求められるのと、参加者自身が何をやっているのか掌握しずらいので、集合研修で行うべきでしょう。

ブレンドラーニングは、研修全体の中で「この部分はオンラインセッション(E-Learningのように個別に受講する手法も含む)で行い」「こちらは集合研修にて参加者同士でディスカッションやワークショップを行う」というような切り分けを、研修内容・タイミング・期待するアウトプットなどに応じて「混ぜる」ことになります。

オンラインセッションにおける重要なことは関係づくりと受講者通しのつながり

集合研修の場合、4-5名で1グループをつくり、その中で自己紹介やグループワークを通して、関係性が構築されると思います。また、研修期間が複数日あれば、その間に講師(ファシリテーター)や受講者同士のつながりも自然に生まれてくることが多いでしょう。

オンラインセッションの場合は、こういったところはむしろ意識して行うことが重要になります。

  • 声のトーンと質(ラジオ番組をイメージしてみてください)
  • 適度な休憩(最低でも90分に1回)
  • こまめに受講者の反応を直接確認したり、ちょっとしたディスカッションも含める
  • アンケートやチャットといったオンラインツールならではのものを最大限使いこなす
  • セッション以外のグループワークも企画する

これによって、集合研修とは別の観点からの利益が生まれます。

  • 3日間の集合研修ならば受けることはできなかった
  • 仕事をしながら受講できたのはよかった
  • 移動しなくともいろんな地域・国の同僚と参加できたのは貴重だった
  • 研修が終わってからも、何度も見直したり、(とばしとばし)受講しなおせるのはよかった

準備8割・デリバリー2割の時間配分

これはブレンドラーニングだけではなく、研修全体に言えることですが、デリバリー(実際の研修実施)のウエイトよりも圧倒的にその前の準備時間の方が多いはずです。特にオンラインセッションのように研修コンテンツだけではなく、システムも絡んでくる場合は、「準備8割、デリバリー2割」くらいの気持ちであることが肝要だそうです。要するに、「準備がすべてが決まる」ということでしょうか?当然、ITトラブルについてはそれが無いように事前の確認などは必要ですが、そういったことが発生するかもしれないという覚悟の気持ちはもっていたほうがよいでしょう。

テクノロジーにキャッチアップすることが人材開発担当者には求められている

ちなみに、フォーチュン誌の世界企業トップ500社のうち、8割以上はこういったオンライントレーニングを導入しているようです。導入状況はコンテンツによって異なっております。

  1. IT関連:88%
  2. 技術関連:85%
  3. 製品:79%
  4. ビジネススキル:77%
  5. ヒューマンスキル:70%
  6. マネージメント:69%
  7. コンプライアンス:56%
  8. 入社オリエンテーション:55%

出典:IDEA DVELOPMENT株式会社 配布資料

 

先月まで勤務していた会社では、「1」「7」については確かにオンラインセッションがありました。また、業務担当上、海外本社主催のセッション(プレゼンテーション+QAセッションのようなものですが)を月に1-2回は受講していたので、そちらは「2」に該当するかなと思います。

2000年代初頭だと、動画などのコンテンツを作成し、それをLMS上に正常に動作するようにアップロードするのに膨大な時間を必要としていました。今では、スマートフォン一つで動画を作って編集することができ、そのファイルを(LMSなどに)アップロードするだけで公開できます。そのため、「どういったことを伝えたいのか」「何ができれば達成したといえるのか」という、研修そのものの本質をしっかり考えることによりフォーカスすることができるようになったといえます。また、ブレンドラーニングにすることで、1回きりの集合研修で終わらせずに、数回にわけて実施することもできるので、単なるイベントではなくなり「研修の継続性」が生まれてきます。

集合研修だけではなくオンライントレーニングも取り入れてブレンドラーニングを構築するためには、人材開発担当者は、ある程度のラーニングプラットフォームについての知識やリテラシーを持っていることが必須ではないかなと思います。そういったものから目をそむけてしまうと、今度は、企業が求める人材育成に貢献していくことが段々と難しくなっていくのではないかと感じています。

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