前回の続編です。ATD21のセッションに参加して、なるほど!と思ったり、共有したいことをあげたいと思います。
E-ラーニングをデザインするときに考慮すべきこと
E-ラーニングのコンテンツを検討する際に、どうしても技術・技巧的なことにフォーカスしがちではあるが、これは学習者にとってはほとんど意味のないことです。「Is Interactivity Enough? The Key to Successful E-Learning Designs」では実例もふまえて、何がE-ラーニングデザインに必要なのかを紹介されていました。
技巧的なこととは、例えば「(何かの質問に対する正解を選択する際に)画面上でクリックさせるか、ドラッグアンドドロップさせるか」といったことです。確かに、学習者にとってはどちらであっても違いはないかも(笑)・・・。
「双方向なE-ラーニング」にするためにはどうすればよいのか、ポイントを5つにまとめていました。
What impacts meaningful interactivity?
1. Tell a story to the learner
2. Don't write questions, create experiences.
3, Require significant thought to make progress
4, Consequences (feedback) are most important thing
5, Connect with something authentic in the learner#ATD21— Nagami_Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) August 30, 2021
- 学習者に伝えるのはストーリー
- 質問を記すのではなく、体験を作る
- 上達のために(学習者が)思考する
- フィードバックを重視する
- 学習者が持っている本物の何か(実務?)とつなげる
近年各所で言われている「Experience」がここでも登場しています。「自分で考えて、実際に経験できるようストーリーを組み立て、それが実務でも使えるアウトプットにする」ことが重要であって、確認テストを設けるかどうかということではない、ということでしょう。
ちょっと古いテクノロジーじゃないの?っていう、つっこみどころはあるものの、言わんとしていることはその通りだし、しかも事例をもとに解説していたので、ラーニングコンテンツを設計する際の参考になった。#ATD21
— Nagami_Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) August 30, 2021
セッションに参加した直後に↑のように所感をコメントしました。
企業をこえたラーニングプラットフォームとは
ラーニングコンテンツは各企業が保持しており、仮に研修ベンダーから購入したりクラウドサービスを利用できるように契約したとしても所属企業を離れると利用できなくなるのが定石でしすが、それを解決する方法があるようです。「Can L&D Practitioners Become Agents for Global Change?」というタイトルのセッションでは、国連ユニタール(国連の研修・教育機関)とEdApp社にて、Educate Allという無料オンラインプラットフォーム を提供していることと、そのメリットなどを取り上げていました。
この件は2020年4月にプレスリリースも出ています。
セッションの中で、「アフガニスタンのある女性は、このプラットフォームに登録されているコンテンツで「起業のいろは」を学んで起業した」という事例も紹介されていました。
このプラットフォームに登録されているコンテンツはSDGs、男女共同参画、リーダーシップ、起業家精神など多岐にわたっており、自前でコンテンツを開発することが難しい内容、あるいは自前でコンテンツを開発する内容ではないが必要なものなどにおいて、このプラットフォームを活用することができます。
コンテンツは多くの企業などから提供されており、セッション終了後に調べたところ、ペルノリカール社が「Bar World of Tomorrow(未来のバーの世界)」というタイトルのコンテンツをリリースしたこともあったようです。
上記の例として、ペルノリカール社が「Bar World of Tomorrow(未来のバーの世界)」というタイトルのコンテンツをリリースしたらしい。#PERNODRICARDhttps://t.co/Qz1XQnLkQt
— Nagami_Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) August 30, 2021
研修効果をはかるにはカーク・パトリックの指標を捨てること
研修効果をはかる方法に関しては色々な説が出てきておりますが、新しい手法を取り入れるだけではダメで、根本的な発想の転換が必要であると「Shattering the Way L&D Thinks About Measurement」では述べられており、その原体験として「Peloton(ペロトン←日本ではまだ利用できないようです)」をあげていました。
出典:【ハマっていること in NY】家にいながらインストラクターと一緒にバイクができるPeloton ペロトン
マーケティングではデータを分析し、そこから得られた内容を基にして、既存のフレームワークを捨て去ったサービスを展開することがあることをPelotonを例に取り上げ、研修においても同様のアプローチが有効だろうとおっしゃっていました。
業務上発生している問題を解決させるために、「結果的に研修を実施する」のであり、「研修を実施する」ことが目的ではないです。研修は、場当たり的ではなく個人のニーズやタイミングにあったものを提供すべきとのこと。そのためには、会社の現状(ビジネスの状況)がダッシュボードで照会できるようにするべきであろうという持論を展開していました。
具体的には、以下の8つの事項を提案されており、その中の一つとして「Let go of familiar models that don’t work.(有名だが効果の無いモデルを手放す)」とおっしゃっていました。
データに基づく分析とそれから得た知見を具現化すべき、ということですね。研修領域では「研修コンテンツありき」で進められることがありますが、本末転倒であり、業務上発生している問題の解決手法の一つとして「研修実施」が位置付けられていないと意味がないです。受講者のことを置き去りにして、「こんな研修をやりたい」というテクニックばかりが先行しているL&Dプロフェッショナルは、要注意です。
<ATD21@Homeに関する過去記事>