【ATD2019】経営幹部は人材開発プロフェッショナルに研修の提供を求めていない

ATD
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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先日のATD2019にて、多くのセッションに出席しました。その中で、「人材開発プロフェッショナルの役割や期待すること」について言及していたセッションに複数出たのですが、これが新たな提言もあれば、要するに「進展が無い」ってことだよね・・・というものもあり、なかなか一考の価値ありと言えるものでした。

事実だが2年前と変わっていない

毎日、4億枚の写真がインスタグラムにアップロードされ、5億ツイートがツイッターにあげられているようです。そんな世の中なので、ラーニングの置かれている環境も大きく変わっております。

  • ソーシャルラーニング
  • プッシュ型からプル型へ
  • 上司の責任領域の増大
  • 分散化
  • パーソナライズ/個別化
  • バイトサイズ(非常に小さいサイズ)

それに伴って、人材開発プロフェッショナルの役割はどのように変わってくるのか?3つのキーエリアがあるようです。

  • Collecting & Curating Information(情報の収集とキュレーティング)
  • Coaching & Connecting(コーチングとつなぎ)
  • Consulting & Coordinating(コンサルティングと調整)

経営幹部にとっては、上記を軸とした「信頼されるアドバイザー」になることが求められています。具体的には、経営幹部とパートナーシップを構築するために、以下のポイントを述べていました。

  • (経営幹部と)足並みをそろえる
  • (所属会社の)ビジネスについて話す
  • (所属会社の)ビジネス戦略を掌握する

上記を実践している人材開発プロフェッショナルは少なく、反対にそういった方は経営幹部は、ビジネスゴールに到達する助けになると認識しているようです。

そのとおりですが、2年前に話されていたこととそれほど変わっていません(笑)。

<ATD2017>社員にとって研修を受けることは目的ではない。戦略的パートナーとしての人材開発プロフェッショナルとは?
先週参加したATD2017のセッションの中では、人材開発プロフェッショナル(以下、L&Dプロフェッショナル)がエグゼクティブや他部門に求められていること/必要なこととは、どういうことなのかをテーマとし.....

要するに、「課題」として認識されている=「信頼されるパートナー」へは途上段階 ということではないかと思いました。

M206 – Evolving Your TD Role as a C-Suite Trusted Advisor

デザインシンキングとフレームワークを使いこなせ

ラーニングリソース(文書・E-Learning・動画など)は、使いにくく、さがすのが大変で、さらに現場で適用しにくいと言われています。なぜなら、たくさんありすぎるからです。学習者(受講者)を中心にしたラーニングを構築するためには、「デザインシンキング」を適用すべきです。

デザインシンキングというのは「考え方」であり、具体的には、以下のようなことです。

まず、ユーザーの考えや課題を理解します。そして、それから得られた現状の問題を定義し、それを解決するミニマムなプロトタイプ(試作品)を作ります。そのプロトタイプでユーザーの反応を見ながら、プロダクトをブラッシュアップしていきます。

出典:デザインシンキングとは、方法ではなく考え方だ – メルカリ流の実践方法

当然、デザインシンキングはL&D (Learning & Development) の分野でも適用できる考え方であり、「オプションを提供しつつ、だんだんと本質にフォーカスしていく」「デリバリーコンテンツではなく、コンセプト」を構築することが求められています。

また、多くの「フレームワーク」が存在しているので、それらを徹底的に調べるべきとのことです。例えば、以下があげられます。

  • More Than Blended Learning
  • Continuous Learning
  • Learning Campaigns
  • Learning Environment Design

詳細は “Curated Resources”→”Multifaceted focused strategies”段落に記載されています。

W315 – Talent Development Strategy: Divergent Roads on the Path to Success

CEOが人材開発プロフェッショナルに理解してほしいことは・・・

ずばり、ビジネスそのものです。具体的には以下の5つです。

  • 現金持ち高とキャッシュフローの違いを認識する
  • 損益計算書から基本的な収益算出の流れを把握する
  • 資産の活用と強度を理解する
  • 売上高と利益増加のインパクトを知る
  • 人々のニーズを予測する重要性を知る

「Cash is a King」「金があると積極的になる」といった、ビジネスの土台となるコメントもあり、こういった内容がATDで取り上げられるようになったことは、今までとは大きな違いかと思います。

TU405 – What Your CEO Expects You to Know: Business Acumen to Build Your Credibility, Career, and Company

研修を提供することは求められていない

これら3つのセッションから、人材開発プロフェッショナルに求められていることは「適切な研修を提供する」ことよりも、「信頼されるアドバイザーであること」「デザインシンキングを活用すること」「ビジネスという利益を生み出す活動そのものを理解すること」と考えられます。なぜなら、研修を受けることが目的ではなく、ビジネスで成果を出すための解決方法の一つとして研修があるからです。

<ATDに関するレポート>

【ATD2019】フィードバックがネガティブなものではなく、ギフトとして捉えられるふるまいとは
「フィードバック」は、評価サイクルだけではなく、日常の業務の中でも定着しつつあるアクションでしょう。ATD2019においてもフィードバックに関するセッションは数多く設けられており、私もいくつかのセッシ.....
【ATD2019】マイクロラーニング・ニューロサイエンスの動向などATD2019雑感
1ヶ月以上前のことになると、記憶も薄れてきます。「脳が2週間後に記憶しているのは10%程度」と話されていたセッションがあったので、今となっては5%程度だとしても致し方ないのか(笑)。 今まで取り上げた.....

<参考:ATD2019 リアルタイムのつぶやきのまとめ>

【速報】ATD2019をTwitterとFacebookで振り返る
ATD2019期間中のTwitterやFacebookの発信をまとめました。Twitterに関しては、日本以外の方にも伝えたかったので、英語でのツイートが多めです。改めて整理したものではなく、現地で感じた時に感じたままに記しています。
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