5月にアトランタで開催されたATD2017に関する記事はいくつか掲載していますが、これで一区切りとなります。研修の効果をはかることにフォーカスした「Learning Measurement & Analytics」トラックのセッションには一番多く出席していました。というのも、研修の企画・実施を行ったあと、それに対する効果をどう示すことは最も重要だと思っているからです。今回は、研修実施後にどういった成果があったのかを示すレポートのフレームワークについてふれます。
タレントディベロップメントのレポート:3つのタイプ
レポートの種類は3つにわけられるとのこと。
- 有効性:(研修の)品質 <How well?>
- 効率性:(研修の)回数、費用、活用<How much? How many? At what cost? >
- 結果・成果:(研修の)ビジネス/組織への影響<What is the impact on the business?>
「1」「2」は、報告する状況などによって緩急をつけてもよいが、「3」については言及しないというのはあり得ないものだそうだ。そりゃ、そうでしょう。L&Dプロフェッショナルというのは組織の成功に貢献するのが役割ですから。
また、レポートのターゲットによって、何をはかるのかを選択する必要があるので、同じものを提示すればよいというわけではないです。研修関係のレポートだから、全てのケースにおいて「出席者数」「回数」「費用」「アンケートのサマリー」を記載すれば成り立つとは限らないわけです。これも確かに。
3つのレベル Operation,Program,Summary
また、3つのタイプとは別にレポートは3つのレベルにわけられるようです。
- Operation Report:「有効性」や「効率」の視点から改善をもたらすもの
- Program Report:想定していた結果が得られたかどうかを管理するもの
- Summary Report:経営層などにまとめた結果を示すもの
最終的には以下のアプローチになるとのこと。
- 3つのタイプ(有効性、効率性、結果・成果)の枠組みを使用する
- 何をもって効果と効率を図るのかをリストを作成する
- 管理する有効性&効率性対策の計画を立てる
- 効果と効率の指標を追加して、Operation Reportを作成する
- Program Reportを作成する
- 上層部からのインプットで結果・成果の指標リストを作成する
- Summary Reportを作成する
ビジネスの結果に貢献するラーニングソリューションの提示
その一方で、研修関連のレポートを見たときに、「この研修とビジネス上の結果がどうしてリンクしていると言えるのか?(≒関係なくないか?)」って思ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。それを解決させるためには、ニーズには階層があるということと、それと業務上のパフォーマンスをどう関連付けるのか、というのが重要となります。
そもそも、ニーズには4つの階層があります。
- BUSINESS NEEDS(業務上のニーズ)
- PERFORMANCE NEEDS(成果の側面からのニーズ)
- ORGANIZATIONAL CAPABILITY NEEDS(組織能力からのニーズ)
- INDIVIDUAL CAPABILITY NEEDS(個別能力からのニーズ)
「1」「2」は結果とリンクさせる必要があり、「3」「4」は原因や解決策とリンクさせる必要があります。ラーニングアクションを実施する前に、因果関係について明示しておくべきです。そのため、以下のプロセスが必要となるでしょう。
- BUSINESS NEEDS、PERFORMANCE NEEDS、ORGANIZATIONAL CAPABILITY NEEDS、INDIVIDUAL CAPABILITY NEEDSを特定する
- クライアント(対象部門/会社)と取るべきアクションについて合意をとる
- ラーニングソリューション(研修など)の実施
- 組織上の問題を特定する
- 4つの全レベル (reaction, learning, performance, business)で評価をする
- 報告する
何が原因だったのかということを考えるのではなく、どんな貢献によって改善されたのかという視点を持つことが「研修効果の分析」になるとのことです。
*画像は私が撮影した2017年ATDの一コマです。