GEとAdobe、人事評価制度やめたってよ。目的のためには手段はどんどん変えていく

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この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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企業の人事制度において、評価制度は多くの会社で導入しているでしょう。いわゆる、目標管理制度(Management By Objective and self control)によって、年初に上司と業務上の達成目標を設定し、その達成度合いが年度末に評価されます。その結果に基づき評定(4段階~5段階のところが多い)が決定し、賞与金額や昇給率に影響が出てくる(場合によっては昇格・降格もある)という、アレです。

が昨年8月末まで在籍していた会社でも、全世界で導入されておりました。また、これに必要な「評価者研修」も共通プログラムとして存在しており、そのローカライズおよび展開といったことも担当業務でした。

最近になって、最終評点を廃止する会社が海の向こうで増えつつあるようです。具体的には、GEとAdobe。有能な人材を世の中に輩出し、多くの企業がその先進的な人事制度をパクって参考にして導入するGEと、PDFファイルなどに代表されるソフトウエア会社のAdobeが同じ時期に最終評点を捨て去ったのは、何か関係性はあるのでしょうか?

今回は、2016年末に書いた記事の最後でふれた件についてです。

そもそも目標管理制度のメリットとは?

目標管理制度が導入された際にあげられていたメリットとして、以下があげられるでしょう。

  • 社員の能力を引き出し、能力向上にもつながる
  • 目標設定によって社員の主体性が生まれることが期待できる
  • 社員が組織目標に向かう為、業績の拡大につながる

これによって組織の活性化といった点では、大きな役割を果たしておりますが、誤用によって「ノルマ主義」ととらえられたり、成果に対する報酬(昇給・賞与)といったインセンティブにフォーカスがあたりすぎる傾向もありました。もちろん、そうならないために、人事部門が目標管理制度の本来の目的を説くための手法として、「評価者研修」であったり「コーチング」といったツールを展開しています。

目標管理制度が持っている懸念点とは?

フィードバックのサイクルが長すぎる

目標管理制度の場合、評価サイクルが半期に1回あるいは1年に1回のところがほとんどです。そのため、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)の期間が長い、というより間延びしがちでした。そのためにも、上司は部下とのコミュニケーションを、年に1回あるいは半期に1回の評価面談以外にもこまめに行うようにすべき、といったことを私も人材開発担当者として社員に話していました。

しかし、1年の間で状況はどんどん変わってきています。それこそ、当初予定していたタスクがなくなったり、目標を立てていた時には想像もしていなかったことが突然発生したり・・・ビジネスに変更はつきものです。そういった時に、評価面談のタイミングでは追いつかないのです。

もちろん、改めて面談などを設定して、目標を随時修正するのが「セオリー」です。実際に、それが運用として定着しているならば、目標管理制度で全く支障はありません。しかし、現場ではどうかといえば・・・・、なかなか難しいというのが実情です。

運用に時間がかかる(=コストがかかる)

評価制度は、制度の導入よりもそれを運用していくための時間が必要となります。

  • 目標設定の準備
  • 目標設定面談
  • 自己評価
  • 評価面談
  • 全体調整
  • フィードバック面談
  • 人事部門のフォロー・サポート

簡単にあげただけでも、これだけのことが発生し、評価者/被評価者だけではなく人事部門や経営層もそれなりに時間を割くことになります。もちろん、それによって業績がアップし、社員のモチベーションもあがれば、価値のあることです。しかし、会社からの評価と自分の認識との乖離からモチベーションが下がったり、場合によっては退職してしまったりするケースもあるので、本来の目的と反対の動きがあるのも事実です。

短期間で振り返りができる仕組み

AdobeやGEが具体的にどんな制度に変えたのかというのは、それぞれ概要がまとまったサイトがあるので、参照していただければと思います。以下は抜粋です。

1. Adobe

年次勤務評定を撤廃して、より頻繁かつカジュアルな「チェック・イン」プロセスを導入した。マネジャーらと社員は、最低でも3か月に一度チェック・イン・ミーティングを設ける。このディスカッションの内容は資料として用意されたり記録されたりはしないが、毎回必ず3つのトピックについて確認を行う。期待(expectations)、評価(feedback)、および今後の成長と発展(growth and development)である。

出典:@人事

2. GE

新制度は「PD@GE」というスマートフォン・アプリを中心に展開し、従業員はこのアプリを使って、従来のように年に一度だけではなく、部下や上司らと頻繁にフィードバックのやりとりを行っていく。

出典:@人事

AdobeもGEも最終評点を廃止して、業務の振り返りやフィードバックを短期間のサイクルで行うという点が共通していると思います。業務を行う中で発生したことを適宜フィードバックして、さらに良い方向に進めていくためのツールとなるように変えたというのが本質でしょう。

<2021年7月21日追記>GEは2021年からレイティング(最終評点)を復活させたようです。具体的には3段階で相対評価ではない、とのことです。また、期の途中で社員が自分で数名を選定して、評価を行ってもらう360度評価のような仕組みも取り入れるようです。

そもそも、企業において評価を行っているのはなぜでしょうか?よく、「人事部門がやれというからやっている」と答えるマネージャーもいらっしゃいましたが(笑)、それは全く本末転倒です。

企業としての業績をあげるために、「社員が最大限成果を出すことをサポートするため」および「社員の成長を支援するため」に、企業は評価を行なっています。そういった、「本来の目的」から鑑みて、制度を変えたり廃止するという動きは良い流れだと思います。

<2018年3月17日追記>評価制度に関して「@人事」編集部からインタビューを受けた時の記事です。

<2017年11月9日追記>ノーレイティングが評価制度の課題解決になるのかどうか・・・について、考えてみました。

<2017年3月13日追記>この記事を公開して発生した大反響についてまとめました。

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