ATD24で参加したセッションの中で、気づきを得た・共有したいと思った点についてあげていきたいと思います。
今回は、セッションの内容から派生して、日本国内でよく言われている「DX人材育成」が、なぜ諸外国ではほとんど取り上げられていないのかを考えました。
人材育成方針を構築するための「型」とは
5月20日に参加したセッション、「Building a Talent Development Strategy From the Ground Up」では、とある建設会社がが成長するために、人材育成体系をどのように構築したのかについて説明されていました。
リーダーシップ能力を開発するプロセス
- リーダーシップのマインドセットを定義する。←考え方と行動の基となる。
- ビジネスにおける目標と企業文化を考慮して、必要とされるリーダーシップ能力を特定する。
- 経営層の支援を得る(巻き込む)
- 将来のリーダーとなる可能性の高い従業員をワークショップに参加してもらい、マインドセットを共有する
- 能力と行動を明確に定義したうえで、360度フィードバックやIDP(個別開発プログラム)を使用して継続的な能力開発を行う
- 継続的な能力開発には、オンラインラーニング、コーチング、アクションラーニングなどの複数のアプローチを使用する
- 受講者とそのマネジャーからのフィードバックを参考に、プログラムを継続的に改善する
#ATD24
「型」を改めて再確認できた。
リーダーシップ能力を開発するのプロセス
①リーダーシップのマインドセットを定義する。これは考え方と行動の基となる。
② ビジネス目標と文化を考慮して、必要とされるリーダーシップ能力を特定する。
③ 経営層の支援を得る(巻き込む)
④… pic.twitter.com/jRyEKsCIpT— Nagami@Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) May 20, 2024
内容そのものは普遍的なものだったが、それが最も重要ということだと再確認しました。別のセッションでは「継続すること」を強調していましたが、これもまさにその類といえます。
業績が高い企業が行っていること
また、5月21日のセッション「L&D Technology and AI. . . . Oh My! What the Research Says」において、調査会社のi4CP社による調査結果が共有されました。それによると、高業績企業ではタレント開発(社員の能力育成)やビジネス業績をあげるために、L&Dテクノロジーを使いさらにAIやLMSを活用して個人スキル開発と企業文化醸成を支援している傾向が高いことが明確だそうです。
According to ICP's research, high-performing companies leverage AI and LMS to support individual skill development and culture reinforcement. Articulate(Company Name) was a popular L&D technology investment, but LMS functions still have room for improvement. #ATD24 pic.twitter.com/0aJov2yTZ4
— Nagami@Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) May 21, 2024
L&Dテクノロジーを導入すれば高業績になる、というわけではなく、社員能力育成に対する課題に対してこのような取り組みを行った結果、業績の向上につながるということです。
「DX人材育成」をテーマにしたセッションは?
両方のセッションから読み取れることとして、研修企画は、「課題」解決のために実施する施策の一つであるということです。一方、ここ数年、日本企業の中では「DX人材育成」に着手検討しているところが増えています。これは、本当に社内における課題が起点となっているのでしょうか?
- 同業他社で行っている
- 他社でうまくいっている(ように見える)記事を見た
- セミナーで言われていて自社にも当てはまるかもしれない
こういったことをきっかけに、あるいは経営層から上記のようなことを言われて、「DX人材」とはどんな人材なのかを経産省のサイトなどを参考に「定義」して、それにあった研修を実施したり、社内ですら通用しないしか通用しない「資格」「バッチ制度」を設けたりしていませんか?「会社にとって有益なDX人材育成研修を実施している」はずなのに、想定していた反応とは異なり、
- 研修に参加する社員が(期待より)少ない
- 「業務上の都合」のためドタキャンの発生頻度が高い
- 参加していても何らかの「緊急事態」のために途中離脱してしまう
といった状況に陥っていませんか?これは「DX人材育成」研修が、会社の課題解決のために行う施策の一つではなく、「トレンド」「今後必要なスキル」といった”思い込み”からスタートしているからだと思います。
研修企画は「備えあればうれいなし」ではない
もちろん、全てが間違っているというわけではありません。たしかに、データサイエンスのスキルは無いよりあった方が有益です。でも、全社員(あるいは一定以上の役職)が必要かといえば、そうとはいえないことがほとんどです。
- データサイエンスのスキルを使って何がしたいのか
- 何のためにデータサイエンスのスキルを身につける必要があるのか
- 外部に委託することではなく、社員がスキルを身につけることによってどんな効果が期待できるのか
これらを考えずに研修計画を立てる企業は少なくありません。研修企画は「トレンド」ではなく、企業の課題解決のための施策の一つであり、職場での実践を前提としています。「備えあればうれいなし」といった類のものではありません。
そのため、各社のニーズや要件がそもそも同一ではない「DX人材をどのように育成すべきか」という抽象的なテーマのセッションがATDには存在していないと理解しています。