研修プログラムに関連してコーチングを行う機会があります。その中で、「今後、どのようなキャリアをあゆんでいきたいのか?」と質問をすると、相手が40代~50代の場合、結構な高い確率で「後進の育成に関わりたい」「後輩にアドバイスができる立場になりたい」といったコメントをもらいます。
なぜアドバイスをしたいのか?
なぜ、アラフィフの会社員は20代・30代の後輩社員にアドバイスを提供したい思うのでしょうか?いくつか考えられる背景をあげてみます。
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経験の共有: 年齢を重ねることで、仕事や人間関係においてさまざまな経験を積んできます。これらの経験は、若い世代にとっての貴重な教訓となる可能性があります。先輩社員は、自分が過去に直面した課題や困難、成功体験などを共有することで、後輩の成長や問題解決に役立てたいと考えることがあります。
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メンタリングとサポート: 年齢を重ねた社員は、後輩たちが自身が通った道を効果的に歩む手助けをしたいと願うことがあります。メンタリングやサポートを通じて、後輩たちのスキルや能力向上を支援し、組織全体の成果に貢献したいと思うからです。
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自己肯定感と社会的意義: アドバイスを提供することは、自己肯定感を高める機会となることがあります。また、自身の経験を通じて後輩たちに貢献することは、社会的な意義を感じることができる行為として捉えられることがあります。
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組織文化への貢献: 多くの組織は、経験豊富な社員の知識と洞察を尊重し、次世代の人材育成に注力しています。先輩社員が後輩たちにアドバイスを提供することは、組織文化の一環として育成活動に貢献する手段となります。
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個人的な満足感: 自分の経験や知識を活かして、後輩たちの成長に関与できることは、個人的な満足感や達成感をもたらすことがあります。また、後輩たちの成功を見守ることで、その成果に共感し喜びを感じることがあります。
話を伺っていると、「1」「2」「4」がきっかけとしては大きいのかなと感じました。その結果として「3」「5」に到達するだろうし、その要素も外せないだろうなと思います。ただ、最初から「5」だけを目的としているのは、相手にとっては迷惑にすぎないだろうなと個人的には認識しています。
若手からのニーズはあるのか?
そもそも、20代・30代の会社員が50代の「先輩社員」からのアドバイスを受け入れるかどうかは、個人によって異なる傾向があるでしょう。適切なコミュニケーションとアプローチがあれば、多くの場合、経験豊富な先輩からのアドバイスは歓迎されるでしょう。
20代30代の社員がアドバイスを望む可能性のあるポイントと、アドバイスの内容の例としては以下が考えられます。
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キャリアアドバイス: 具体的なキャリアパスやスキルの獲得方法、転職のアドバイスなどが含まれます。
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プロフェッショナルスキル: 技術や業務に関するスキル向上のためのアドバイス。新しい技術のトレンドや、実務での問題解決方法、効果的なプロジェクト管理のヒントなどが該当します。
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人間関係とリーダーシップ: 人間関係やリーダーシップに関するアドバイス。コミュニケーションの改善方法や、チームのモチベーションを高めるアプローチなどが含まれます。
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バランスとワークライフ: 若い世代はワークライフバランスに関心を持つことが多いです。仕事とプライベートの両立方法やストレス管理のヒントなど、バランスを保つためのアドバイスが役立つでしょう。
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失敗からの学び: 先輩が過去に経験した失敗や挫折から得た教訓を共有することで、若い社員は同じ過ちを避けることができるかもしれません。失敗からの学びを通じて成長する方法を伺うのは、有益でしょう。
今では通用しない「武勇伝」を延々と語られるのは避けたいが、自分が経験していない、かつ、今後に活かせそうな内容であれば有益であるといえます。
そもそもアドバイスする方が、相手から「信頼されている」ことが前提であるのは言うまでもありません。責任は持ちたくないがアドバイスをすることで「達成感」を得たいっていうのは、間違いなく若手に見透かされると思います。
逆のパターンも増えている
今回は年齢が上の世代からのアドバイスに関して取り上げました。しかし、最近では「リバースメンタリング」とよばれる、「若手社員がメンターになり、先輩社員や上司にデジタルスキルを教えたり、若手世代の価値観を助言をする」といったことに取り組むケースも増えています。サンディエゴで開催されたATD23のセッションでも言及されていただけではなく、日本でも既に資生堂社やP&G社にて導入されています。組織の硬直化を緩和するだけではなく、職場の活性化にもつながります。
他者からのアドバイスがうまく活用できれば、これ以上に有益なものは無いので、世代に関係なく取り入れられる職場環境をつくることにも関わっていければと思っています。