国内外問わずHR Techサービスは数多くありますが、単体ですべての業務をカバーするのは難しいと思っています。いわゆるSAPやOracleのようなERPであっても、利用ユーザー企業のニーズに合わない分野はあり、複数のシステムを組み合わせるのが「現実的な解」だからです。
最近は、色々な形での「連携」が増えてきました。具体的にはシステム上のデータ連携、あるいは、企業と間の連携(買収・子会社化)です。
システム上のデータ連携
システム間のデータ連携のケースを3つあげたいと思います。
SmartHR
SmartHRでは、社員による身上届の申請、年末調整に関する申請などの機能を有している一方、採用管理・給与計算処理・勤怠管理・人事評価ツールといったものはありません。そのため、SmartHRと他のHR Techサービスがデータ連携することで、「疑似的に一体化した人事システム」を構成することができると理解しています。
連携しているサービス一覧を拝見すると、SmartHRから「従業員データの取り込み」が対象となっているHR Techサービスが多くみられます。つまり、「SmartHRを人事データのマスター」として使うことを想定しています。
また、各人事領域ごとに複数のHR Techサービスと連携しているため、「SmartHRを使いたいけど、今使っている採用管理ツールと連携できないから・・・」といったことが発生する確率が少ないです。
COMPANY
Works Human Intelligence社が提供しているCOMPANYは、日本発ERPパッケージとしての実績があり、今までは「COMPANY単体」で人事業務を行うことを前提として製品を開発・拡張してきたと認識しています。
しかし、2021年11月に、「採用管理、健康管理、組織サーベイ、退職予測、ワークフロー・タスク管理等、各専門領域に特化したサービスとの連携を順次開始」することを発表しました。
人事システムとしてCOMPANYをフル活用することを前提に、それほど機能がそろっていない(or対応していない)領域および周辺分野での連携を主眼としています。今後、連携していくサービスも増えていくのかもしれませんが、現時点では各領域ごとに1つのサービスとの連携となっています。既存COMPANYのユーザー企業に対して、そのデータ活用や拡張性を提供することが目的ととらえることができます。
企業間の連携
次にシステム間だけでなく、企業として連携(=買収・子会社化)したケースをあげたいと思います。
コーナーストーン/Saba
2020年にコーナーストーン社が、同業のタレントマネジメントシステムを提供するSaba社を買収しました。その後、1年程度をかけて、企業および製品の統合(=吸収)が行われたようです。当時は私も↓のようなツイートをアップしていました。
SabaがCornerstoneに買収されるようです。Saba社のWebサイトにも同様のリリースが出ていました。https://t.co/QvXjvvAs3s
— Nagami@Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) February 25, 2020
マーケットにおける優位性を確固たるものにしただけではなく、グローバル企業間の統合としては、かなりスピーディーに実行されたといえます。日本語版のSaba社のサイトは2022年1月時点でも、アクセスすることができますが、「Saba.com」は既にコーナーストーンのサイトにリダイレクトされるようになっているのが、その最たる証拠の一つといえます。
ビズリーチ/IEYASU
2022年にリリースされた記事によると、「HRMOS(採用管理・タレントマネジメント)」を展開しているビズリーチ社が、勤怠システムなどをリリースしているIEYASU社を子会社化し、さらにサービス名称も変更して、「HRMOSシリーズ」のラインナップとすることにしたようです。
HR Techサービスの買収合戦がついにはじまったのかな。HRMOSは勤怠機能が無かったから、そこの補完って感じ? https://t.co/OvCYjLVjX9
— Nagami@Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) January 12, 2022
このケースは、元々のHRMOSには無かった機能を補完するだけではなく、ベンダー企業そのものも子会社化しています。
COMPANY/サイダス
サイダス(CYDAS)社が、COMPANYを開発・展開しているWHI(Works Human Intelligence)社に買収されたというリリースが、2024年6月24日に出ました。
直近の影響は無いとは思うものの、将来的にはタレントマネジメント領域の機能がCOMPANYの中に取り込まれるだろうと推測しています。
サイダスがWHI社に買収されたって、これは大きな出来事かも。以前リリースした記事のような展開が、さらに進んでいるのかな。https://t.co/B72m1IUez9https://t.co/NKVdKOz9Eg
— Nagami@Aldoni Inc. (@nagami_aldoni) June 26, 2024
<参考>カオスマップ・押さえておきたい5つのポイント
HR Techサービスは次々と新しいものがリリースされており、「HR Techサービス カオスマップ」によると、日本国内だけでも300近くあるようです。
それだけ多くのプレイヤーが存在しているゆえ、今後もデータ連携によるつながりだけではなく、買収や資本提携による企業間の「つながり」も増えてくるのではないかと思います。
これだけみると、選択肢がありすぎるように感じるかもしれません。しかし、「自社で実現したいこと=要件」をつきつめていくことで、ある程度しぼることはできると思います。また、機能面以外に、HR Techサービスに必要だと思う5つの点については別途、↓にまとめているので参考にしてください。