HR Techサービスはデータ連携しつつ、同時に企業間で生き残り戦が行われている

HR Tech
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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国内外問わずHR Techサービスは数多くありますが、単体ですべての業務をカバーするのは難しいと思っています。いわゆるSAPやOracleのようなERPであっても、利用ユーザー企業のニーズに合わない分野はあり、複数のシステムを組み合わせるのが「現実的な解」だからです。

最近は、色々な形での「連携」が増えてきました。具体的にはシステム上のデータ連携、あるいは、企業と間の連携(買収・子会社化)です。

システム上のデータ連携

システム間のデータ連携のケースを3つあげたいと思います。

SmartHR

SmartHRでは、社員による身上届の申請、年末調整に関する申請などの機能を有している一方、採用管理・給与計算処理・勤怠管理・人事評価ツールといったものはありません。そのため、SmartHRと他のHR Techサービスがデータ連携することで、「疑似的に一体化した人事システム」を構成することができると理解しています。

連携しているサービス一覧を拝見すると、SmartHRから「従業員データの取り込み」が対象となっているHR Techサービスが多くみられます。つまり、「SmartHRを人事データのマスター」として使うことを想定しています。

また、各人事領域ごとに複数のHR Techサービスと連携しているため、「SmartHRを使いたいけど、今使っている採用管理ツールと連携できないから・・・」といったことが発生する確率が少ないです。

COMPANY

Works Human Intelligence社が提供しているCOMPANYは、日本発ERPパッケージとしての実績があり、今までは「COMPANY単体」で人事業務を行うことを前提として製品を開発・拡張してきたと認識しています。

しかし、2021年11月に、「採用管理、健康管理、組織サーベイ、退職予測、ワークフロー・タスク管理等、各専門領域に特化したサービスとの連携を順次開始」することを発表しました。

人事システムとしてCOMPANYをフル活用することを前提に、それほど機能がそろっていない(or対応していない)領域および周辺分野での連携を主眼としています。今後、連携していくサービスも増えていくのかもしれませんが、現時点では各領域ごとに1つのサービスとの連携となっています。既存COMPANYのユーザー企業に対して、そのデータ活用や拡張性を提供することが目的ととらえることができます。

企業間の連携

次にシステム間だけでなく、企業として連携(=買収・子会社化)したケースをあげたいと思います。

コーナーストーン/Saba

2020年にコーナーストーン社が、同業のタレントマネジメントシステムを提供するSaba社を買収しました。その後、1年程度をかけて、企業および製品の統合(=吸収)が行われたようです。当時は私も↓のようなツイートをアップしていました。

マーケットにおける優位性を確固たるものにしただけではなく、グローバル企業間の統合としては、かなりスピーディーに実行されたといえます。日本語版のSaba社のサイトは2022年1月時点でも、アクセスすることができますが、「Saba.com」は既にコーナーストーンのサイトにリダイレクトされるようになっているのが、その最たる証拠の一つといえます。

過去の似たようなケースでいえば、オラクル社によるピープルソフト買収とそれに伴う製品の統合が2000年代前半にありました。その時は、製品の統合(吸収)に関してはかなり時間をかけて行っていた(る)と認識しています。10数年経過した今でも、オラクル社のWebサイトにピープルソフトが掲載されていることからも、その辺はうかがえると思います。

ビズリーチ/IEYASU

2022年にリリースされた記事によると、「HRMOS(採用管理・タレントマネジメント)」を展開しているビズリーチ社が、勤怠システムなどをリリースしているIEYASU社を子会社化し、さらにサービス名称も変更して、「HRMOSシリーズ」のラインナップとすることにしたようです。

このケースは、元々のHRMOSには無かった機能を補完するだけではなく、ベンダー企業そのものも子会社化しています。

COMPANY/サイダス

サイダス(CYDAS)社が、COMPANYを開発・展開しているWHI(Works Human Intelligence)社に買収されたというリリースが、2024年6月24日に出ました。

直近の影響は無いとは思うものの、将来的にはタレントマネジメント領域の機能がCOMPANYの中に取り込まれるだろうと推測しています。

<参考>カオスマップ・押さえておきたい5つのポイント

HR Techサービスは次々と新しいものがリリースされており、「HR Techサービス カオスマップ」によると、日本国内だけでも300近くあるようです。

それだけ多くのプレイヤーが存在しているゆえ、今後もデータ連携によるつながりだけではなく、買収や資本提携による企業間の「つながり」も増えてくるのではないかと思います。

【保存版】293のHRTechサービスをまとめたカオスマップ|全サービスをご紹介 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE
近年、クラウドやAIなど、人事領域でもどんどん新しいHR Techサービスが登場しています。 一方で、「多すぎて、なにがなんだかわからない・・・」と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 .....

これだけみると、選択肢がありすぎるように感じるかもしれません。しかし、「自社で実現したいこと=要件」をつきつめていくことで、ある程度しぼることはできると思います。また、機能面以外に、HR Techサービスに必要だと思う5つの点については別途、↓にまとめているので参考にしてください。

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