人事システム関連の調べごとをしていて改めて思ったことです。私がコンサルティング会社で勤務していた10数年前とは異なり、いわゆる外国産パッケージソフトだけではなく日本発のものも多く出てきました。その当時にはなかった「クラウド」によって、ハードウエアのスペックがどうだとかデータ増量がどうの・・・ということよりも別の視点が必要となってくるのでしょう。
機能を比較するよりも重要なのは、譲歩できないことを決めておくこと
パッケージソフト毎の機能について比較するのは、売る側にとっては重要かもしれません。ただ、導入するユーザー側にとってはそれほど大きな意味はないかと思います。それよりも、「こういったことはやりたい」ということをいくつか明確にしておくことの方が、圧倒的に重要です。
ここが曖昧だから、「今までのシステムだったら、これがこうできたのにできない」というような、全く実態のない「レガシーシステムの呪い」との戦いになるのだろうと思います。全く別のベンダーが開発した、別のシステムが、同じ動きなどするわけない。それにもかかわらず、「前と同じ業務プロセスにするために、新しいシステムをどう使う(あわせる)のか」というアプローチだと、間違いなく開発費用がかかり、さらに運用がうまくいかないです。断言できます。
今付き合っている人に、「前の彼氏(彼女・夫・妻)はこうだったのに」などと言う人はめったにいないだろうし、いたとしたら、なかなかお付き合いはうまくいかないかと(笑)。それと同じようなことを、人事システムでやっていると思うとイメージつきやすいのでは(笑)?
そうならないためには、「自分たちはこれがやりたい、譲れない」ということを絞り込んでいくつか決めておき、それ以外はできるだけパッケージの開発思想というか、コンセプトにあわせる方がよいでしょう。それぞれのベンダーさんが想定した使用方法で使えば最大限に効果がでます。
反対に、ベンダーさんから「想定業務フロー」が無いと言われたり、回答を曖昧にされた場合は、そのシステムは微妙かもしれません。部分的に機能をつくるだけ作って、つぎはぎだらけになっている可能性もありますので。
例:承認フローが自由に設定できればよい
事業会社にて勤怠システムを導入した際に、「前のシステム」が無くエクセルフォームだったということもあり、承認経路が自由自在でした。それこそ、月の途中で上長が変わった時は「承認処理は現在の上長が行うけど、前の上長もみられるようにしたい」なんていうこともとても簡単。エクセルファイルを印刷した紙ならば、「回覧」をすればいいだけですから(笑)。ただ、これがシステムだとそうもいかないものもあるでしょう。でも、この「要件」はどうしても譲れないならば、そういったことが実現可能なシステムを選定すればよく、他はできるだけシステムに合せればよいかと。
そうすれば、何を軸にして決定すればいいのかが明確なので、選定もしやすいです。選定した後に、「あのシステムはなんで選定対象にいれなかった?」「他にもっといいものがあるはずだ」と言われるような、「隣の芝は青い」現象が発生することもないでしょう。
よく、「うちの会社はいたって普通な業務フローですから」というところは、たいていイレギュラーのオンパレードです。社内にいる人は、さらっと例外に対応しておりますが、一般的には、「え?」と聞き返したくなるようなことである確率が高いです(笑)。これは、コンサルティング会社の時も事業会社の時も実感したことです。そういった「普通の業務プロセス」を見直すタイミングとして、こういったシステム導入を位置づけることができると思っています。
何に絞り込めばいいだろうか?
ここまで読んでくださった方々は、きっと「言いたいことはわかった。でも、何に絞り込めばいいのかはどうやって洗い出すんだ?」と思うでしょう。この辺は、運用している担当者ならば、なんとなくわかっているだろうし、ちょっとディスカッションすれば出てくるものです。気が付いていないだけ。使っている人に聞いて、それをカテゴライズしてまとめつつ比較していけばよいでしょう。その時には、以前ご紹介した「一対比較」もツールとして使えるかも知れません。
もちろん、この辺私が人事プロジェクト支援としてサポートを承ることもできます。
ゴリゴリに開発して作りこむことは、予算があれば何とでもなりますが、その後の運用が難しくなります。それこそ、業務プロセスや担当が変わった、法改正に対応しなければいけない・・・などいろいろな変化の波がやってきます。そのたびに、また莫大な費用をかけることができるわけもなく、またスピード感もかなり遅いでしょう。そういった観点からも、「あれこれ機能比較」するだけでは、砂の上に建てた城のように安定性のないものです。思い切りよく絞り込んで、システムを作ることはさらっと行い、それを使って、どのように企業経営に人事面から貢献できるのかを、社員と向き合いながら考えたいと思っています。