約半月前に、「富士通が5000名規模の配置転換を行う」というニュースがリリースされました。
これに関する世の中の反応は、なかなか厳しいものが主流でした。いろいろな表現がされていましたが、「間接部門に所属する社員を「研修」によって、営業やSEに「変換」するといっているが、実際には「首切り」のためのプロセスにすぎない。」という意見が多かったかと思います。
【悲報】富士通、5千人を配置転換、総務や経理を営業やSEに。合わなければ転職提案へ : IT速報 https://t.co/zz2MeTxjSp https://t.co/S1WVVqCGI6
— はてなブックマーク::Hotentry (@hatebu) October 26, 2018
しかし、本当にこれはいわゆる「首切り」施策なのでしょうか?私は、かなり余裕のある/体力がある会社が行う「リストラクチュアリング」だと感じました。
リストラとは
リストラクチュアリング、日本では「リストラ」と省略されることが多いです。この単語の本来の意味は以下の通りです。
構造を改革すること。特に、企業が不採算部門を切り捨て、将来有望な部門へ進出するなど、事業内容を変えること
出典:コトバンク
「リストラ=社員を退職させること」ととらえがちですが、それは事業内容を変えることによって発生することが多い「事象」にすぎず、そのものズバリではありません。
今回の富士通のケースは、まさにこのリストラクチュアリングを間接部門を中心に行うものです。いわゆる「SIer」とよばれる企業は、ハードやソフトウエアを販売することから、システム導入やそれに関するコンサルテーションなど、いわゆる「ITサービス」事業にシフトしてきているのはご存知の方も多いでしょう。そして、富士通も同じ状況にあります。
そういったマーケットの動きにあわせて、対応をはじめる時期は他社より遅いかもしれませんが間接部門の人員を減らし、その人員を営業やSEなど直接部門に振りかえようとしています。
どんなところが体力があるのか
私は「かなり余裕のある/体力がある会社が行う「リストラクチュアリング」」だと、先ほど申し上げました。どういう点からそのように感じたのかを記載したいと思います。
試すことができる
社員からすれば大きく2つの選択肢が与えられます
- 職種変換して富士通に残る
- 人事・経理など間接部門のプロとして別会社に転職する
これだけだと普通かもしれませんが、富士通の場合、「職種変換して、うまくいかなかった場合、転職支援の制度もある」とのこと。どうするのか迷った場合、まずは「職種変換」を一回試すことができる、というのは大きいなと思います。
研修が受けられる
いきなり異動してOJTで・・・というならば、確かに仕事に慣れるのも大変かもしれません。あるいは適合できないこともあるでしょう。しかし、どの程度の内容・期間なのかはともかくOff-JT(研修)があるのは、手厚い支援と言えるのではないでしょうか?
外資系企業で同じことが起こったら・・・
ところで、このようなケースが外資系企業で発生したらどうなるでしょうか?会社によって対応方法は異なるとは思いますが、だいたいは以下のようなものではないかと推察します。
- 縮小する部門・事業撤退する部門を発表
- 該当部門に所属する社員に以下のような選択肢と回答期限の提示
- 他部門(他国も含む)への社内異動
- 退職金を上乗せした上での会社都合退職(希望者への転職支援サービス付)
- グループ会社への転籍
- 事業変換のために買収した子会社の統合プラン実行
縮小する/事業撤退する部門の社員の異動などについてはできる限りのサポートはするものの、スキルセット変換のための研修など行うことは、全く想定されていないだろうし、ましてや「一回、職種変更した結果、合わない場合は退職する時に改めて転職支援を行う」という2段階の支援も無いことがほとんどでしょう。
また、事業変換のために並行して全く別の会社を買収することもあり、既存社員のスキルセットを変える支援に注力をそそぐこともそれほどないと思います。
そのため、富士通の今回の施策が、「体力がある会社が行うリストラクチュアリング」ではないかと感じました。1つのニュースでも、いろいろなとらえ方があるでしょう。こういった考え方も参考にしていただけるとうれしい限りです。
<2019年2月21日追記>
その後の進捗や周辺事情を続編として記事にしました。