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最近、「制度や業務プロセスを構築するだけではなく、それを支える人事システムの使い方や今後を検討する」ことや「HR Techベンダーと人事部門の間をつなぐ通訳」の機会が増えているので、私自身の現時点(2018年6月→2022年11月に一部修正)での考えを整理します。HRTechサービス事業会社は自社のHR Techサービスについて、人事部門の方は自社の人事システムの構成を振り返る題材にしていただければと思います。
ポジションは大きくわけると2つだと思います。ただし、どちらであったとしても、「最善のものを組み合わせる(Best of breed model)」ことになるでしょう。以前参加したセミナーの中でも、そのように話されており、すべてを1つのシステムで担うのはなかなか難しいだろうと思います。
特定機能にフォーカスする
まず最初にあげるのは、採用、勤怠、給与、評価など何らかの機能に特化したサービス(機能特化型)です。中途半端にいろいろな機能を持っていても使われなければ意味はないだろうし、またそういった「おまけ」的な機能は、ニーズにあわない/満たさないことが多いでしょう。そのため、コアとなる機能を定義し、その分野で勝負しているともいえます。
↑の記事であげたものの中では、採用管理のTalentio、Talent Clound、組織分析や適材適所を分析するINOBERといったものが該当すると思います。勤怠・工数管理に特化したAKASHIも「特化型」といえるでしょう。
機能特化型に必要なもの
機能特化型のサービスは、一つあるいは少数の人事機能に特化していればよいのですが、それ以外に「これが無いと活用されない(ユーザーから選ばれない)だろうな」と思う点が2つあります。
マスター連携の受け口
いわゆる人事マスター情報(例:氏名、所属部門、社員番号など)は、必要な情報である一方、そういった情報のマスターというポジションではないでしょう。例えば、氏名ならば業務上使用する氏名を管理していればよく、戸籍名まで保持している必要はありません。しかし、マスターならば、法対応などもあるのでそういうわけにはいきません。
こういった機能特化型に必要な機能は、別システム(サービス)からの人事マスター情報を受け入れられるインターフェースを持っていないと、再度、氏名などを登録しなおすといった二度手間をユーザーに強いることになります。リアルタイム連携ではないにしても、APIなどで自動的に連携されているのが望ましいと思います。
必要な情報のデータ連携
一方、機能特化型にて作り出された情報は、必要に応じて人事マスターあるいは別システムに受け渡す必要があります。例えば、勤怠集計結果(残業時間数、有給消化日数など)は、それを使って給与計算を行うために、給与管理システムにデータが連携できなければ意味がありません。これも、データがダウンロードできるだけではなく、システム間をつなぐAPIなどがあるとよいでしょう。
人事情報のマスターになる
特定機能にフォーカスするのとは反対に、人事マスターとして人事情報の中心的なポジションのHR Techサービスです。メインおよびそれに関連する機能は有しているが、それ以外のものは別システムとの連携によって実現させるものです。(SAPやOracleのような従来のERPも含まれると思います。)
SmartHRは、社会保険・年末調整といった法的な手続きだけではなく、入社・異動・退職といった人事発令情報も管理できるようになれば、人事情報の中心となりえると思います。
これら以外には、勤怠管理・経費精算・ワークフローに強みを持つTeamSpiritも、別サービスとして人事情報管理を持っているので、マスター型としての位置づけられます。
マスター型に必要なもの
マスター型のサービスは、コアな機能を中心に複数の機能を持っているのですが、人事で使用するすべての情報や機能を網羅する必要はないでしょう。ただし、これが無いとそのポジションにはなれないだろうな・・・というものが私見ですが3つあります。
履歴管理
真っ先にあげられるのが、履歴管理です。異動履歴、組織履歴、評価結果履歴など人事は履歴を照会しそれに基づいた判断をすることが多いです。そのため、「ある特定の日時点の情報」「ある一定期間の情報」が照会できない、ましてや履歴を管理していないのは、マスター型としては論外です。
機能特化型であれば、フォーカスしている機能によっては履歴が不要なケースはあるでしょう。しかし、人事情報の中心的ポジションのマスター型ならば、履歴管理が無いという選択肢はありません。
マスター連携
マスターデータを別のシステムに連携できない、あるいはできるとしてもかなり煩雑な方法しかないのはダメです。別のシステムにマスターデータをシームレスに渡すことができて、はじめてマスター型としてのポジションにつくことができます。
帳票作成とデータダウンロード
HR Techサービス内で何らかの抽出条件を指定し、「ある特定の日時点」や「ある一定期間」の範囲設定ができたうえで、自分で出力項目が選択でき、さらにその結果がダウンロードできれば完璧です。
データ件数が少なければ、全件ダウンロード機能だけでもよいかもしれませんが、「とりあえずデータはおとせるので、あとはエクセルで加工してください」というのはできるだけ避けたいものです。
英語バージョンはあった方がよい
最後に英語に関して。日本でリリースされているHR Techサービスは、日本向けに展開されているので、日本語だけのものがほとんどです。しかし、今の労働環境から鑑みると日本語がわからないユーザーが使うことも十分に想定できるので、「あった方が間違いなく良い」ものと言えるでしょう。英語バージョンがあれば、日本以外のマーケットもスコープに入ってくることもあるのは、言うまでもありません。
HR Techサービスを導入したけど、業務をどう変えていけばよいのかわからずうまく使いこなしていない、HR Techサービスをうまく組み合わせて戦略人事の土台をつくりたいといった会社がございましたら、是非お問い合わせのほど。
<2019年2月14日追記>どちらであっても、おさえるべきポイントは共通ではないかと思うようになり、「改訂版」を記載しました。