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この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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2013年に労働契約法が改正されたことによって、「有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申込みにより、 期間の定めのない労働契約(無期労働契約のこと。以下、無期雇用契約と記載。)に転換される」ことになりました。その効力が実際に発生するのが、今年の4月1日となります。多くの企業は、どのような対応をするべきか検討を進めているでしょう。

無期雇用契約≠正社員

この法律で定めていることの大きなポイントは以下の2つです。

  1. 有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたとき、社員が申込をすることで、期間の定めのない労働契約=無期雇用契約に転換できる。社員からの申込がない場合は、継続して有期雇用でも可
  2. 雇用期間が有期から無期になる以外の処遇については、全く言及していない

特に2つ目は重要です。この法改正が公表された頃(2013年)に、「契約社員/パートとして5年働いていれば正社員になれる」とか「派遣社員も派遣先の正社員になるってこと?」などという説が出回りましたが、両方とも間違っています!

新たな「正社員」枠をつくるきっかけ

まず、「契約社員として5年働いていれば正社員になれる」というのは、完全に間違っているわけではなく、企業によってはそうなる可能性もあります。なぜなら、法改正によって定めているのは、「雇用期間における有期の撤廃=無期雇用」にすることだけです。それ以外の処遇については、有期雇用社員(契約社員やパート)の時の条件と全く同じであっても問題ありません。

例えば、正社員は対象となっているが、契約社員は対象外となっている「退職金制度や持株会への加入」については、無期雇用契約の契約社員(=無期契約社員)に雇用転換したとしても、従前のままであっても構いません。もちろん、これを機に変えること(対象とすること)も可能ですが、それは企業の意思に任されています。

企業として、取るべき方法はざっくりと言えば2つ。

  1. 無期雇用契約社員の処遇を正社員と全く同じにする。すなわち「正社員」にする
  2. 無期雇用契約社員を「新しいタイプの正社員」とする

どちらかといえば、後者を選択する企業が多いと推察します。すなわち、新たな社員区分の創設することを意味しており、諸々な調整が発生しているので、どの会社も今はてんやわんやです。また、社員の方から見ても、雇用期間に制限がないのはうれしいけど・・・・

  • 正社員のように転勤はしたくない(勤務地の限定)
  • 特定の職種で専門職として働きたい。大きな配置転換は避けたい(職種・職務の限定)
  • フルタイムの勤務は難しい。今までのように週3日(あるいは1日6時間)の勤務にしたい(勤務時間の限定)

といったこともあるでしょう。そのため、正社員とは異なる視点で定義した「無期雇用契約社員」=「限定的正社員」の設置が進んでいます。その際に、勤務地・職種/職務・勤務時間の3つの軸(1つ、あるいは複数の軸)を使って従来の正社員との違いを定義した上で、「限定的正社員」の給与/賞与・異動・転勤・昇格・出向・福利厚生などの処遇を考えるとよいでしょう。

派遣社員が無期雇用契約社員として所属する会社は・・・

派遣社員も継続して5年以上勤務していると、無期雇用契約社員に雇用転換をする権利が発生します。ただし、その時点で派遣されている会社ではなく、派遣元会社(派遣会社)に対する無期転換の申込みになります。派遣社員における「継続して5年以上勤務」というのは、同じ会社に派遣されていなければいけないというわけではありません。同一の派遣会社との間で通算契約期間が5年を超え、かつ、労働契約がない期間(派遣先企業に派遣されていない期間)が6ヶ月以上空いていないことが条件となります。

さらに、派遣社員に関しては、今年10月から効力が発生する労働者派遣法改正によって、3年以上は同一会社の同一部署(課レベル)では勤務できなくなります。いわゆる「派遣切り」ではない対応が企業に求められている状況です。これは別機会で取り上げたいと思います。

厚労省の特設ページが有益

いろいろなサイトで、今回の労働契約法改正について取り上げられていますが、私のおススメは、この法律の元締めである厚生労働省がつくった特設サイトです。

まず、「契約社員/パート社員向け」と「人事担当者向け」のページにわかれていて、それぞれの視点に立った説明が記載されています。それだけではなく、モデル就業規則や、既に無期雇用契約社員の制度を導入した事例も詳しく紹介されています。そういった内容を理解するだけではなく、今回の法改正対応にどのような手順で取り組めばいいのかというガイダンスも提示されています。

しかも、お役所発行にもかかわらず文章がわかりやすい!!

ここからは完全に推察ですが、民間のコンサルティングファームかシンクタンクに外注された事業なんだろうなと(笑)・・・。

<2018年3月17日追記>

「@人事」様に労働契約法・労働派遣法改正に関する記事を掲載していただきました。

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