プロジェクトの成功は外部に丸投げをしないこと。事業会社とコンサルティング会社の両方の経験をふまえて

HR Tech
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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事業会社では、人事システム導入だけではなく制度設計や研修プログラム開発など様々なプロジェクトが発生します。これが成功するかどうかは、外部会社に依存しない、すなわち丸投げしないことにかかっています。

全てを内製化すべきというわけではない

プロジェクトマネジャーやメンバーなどありとあらゆるリソースを内部で調達すべきなのかというと、そういうことでもありません。もちろん、規模が小さいなどの事情で社内で完結するようなプロジェクトもあります。その一方で、何らかのところを外部会社(コンサルティングファームや業務委託のコンサルタントなど)にお願いすることもあると思います。外部会社の関わり方として以下のようなケースが考えられます。

  1. ほとんど全てのリソースは内部で調達するが、特定の専門分野(PMO:プロジェクトマネジメントオフィス、ある特定システムの機能・運用方法など)についての支援する
  2. PM(プロジェクトマネジャー)として社内の担当者がアサインされ、外部会社のカウンターパートナーとなる方とタッグを組みつつプロジェクトは進める。実際の作業は外部会社が行うとしても、最終責任・承認はPMが行う
  3. 内部および外部会社双方にリソースを同程度出して、一つのチームとして進める

いわゆる丸投げの何が問題なのか?

システム導入ではよくありがちですが、外部会社にすべてを丸投げしているケースは、どんなに有能な外部コンサルタントがアサインされたとしても「失敗」に終わるケースが高いです。社内からメンバーはアサインされているものの、外部会社からリクエストされた打ち合わせに参加する程度で、その開発過程に関与していないというのも、ほぼ丸投げといっていいかと思います。

制度でもシステムでも導入するだけなら、それでもたいして問題はないかもしれません。外部会社もビジネスですから、内部のメンバーがあまり関与しなかったとしても、それ相当なものをつくりあげることは可能です。

ただ、その後の運用段階で確実につまずきます。それこそ、「設定にモレがあった」「(導入プロジェクト時には)想定していなかったケースが発生した」といったことが判明して、追加開発やプロセス変更が発生したり、「マニュアルを読んでも、どのように運用していいのかわからない」などということも十分にあり得ることです。いわゆる「ブラックボックス化」しているのが原因です。

コンサルティングファームで勤務していた時、プロジェクトは終了し、既に別のプロジェクトに参画しているにも関わず、お客様から「緊急ヘルプコール」がかかってくることもありました。そういう時は、たいてい上記の丸投げケースです。

その一方で、外部会社の方としては完全に「過去の実績」です。年度評価やプロジェクトレビューで「過年度の別プロジェクトで得た経験や業界知識を適用して、XX社にとって最適な業務変革に貢献した」と記載する頃には、運用については契約上スコープアウトのため関与することはなく、「緊急ヘルプコール」の後どうなったのかは知る由もないというのがほとんどでしょう。

「あとは、すぐに私たちが使えるツールが出てくることを期待しています」で失敗を確信

私が事業会社で勤務していた時に、「業務プロセス改善プロジェクト」が立ち上がったことがありました。外部会社に現行業務の分析や、それに対する改善案の提案を依頼するものでしたが、いわゆる「丸投げ」でした。実は、私はこの「内部側からの業務改革プロジェクト参画」に関心がありました。ただ、それによって本来の業務にかなり支障が出てくることもわかっていたので、「とても興味はあるが、現業に支障が出る。その辺の調整をしてもらえるならば是非やりたい」と上司と意向を伝えました。そのような「立候補」は私だけではなく他スタッフからもあったようなのですが、どの方に対しても現行業務の調整がされず、結果的には「誰も担当者をアサインしない」ことになったようです。

そういった環境でスタートしたので、そのプロジェクトの状況も部門内で共有されることもほとんどありませんでした。だから、「非現実的な改善案を提案されたから、やり直してもらっている」「結局、業務アウトソースのビジネスをねらっているだけだろう」「そもそもどうしてあの会社に依頼したんだ?」といった憶測や推測だけが部門内で出回り、実用的なアウトプットが出ていないことだけは明らか・・・・。

このままではまずいとさすがに気づいたのか、途中から部門内で担当者がアサインされました。そして、ある件について話を聞きたいという依頼がその担当者からあり、外部会社との打ち合わせに出席したことがありました。打ち合わせの終わり間際に、担当者から「あとは、すぐに私たちが使えるツールが出てくることを期待しています」というコメントが発せられたときに、これはまず成功はしないだろうと確信(?)した次第です。対応が丸投げそのものですからね・・・。

自社で解決できないことは他社でも解決はできない

では、どうすればよいのか?これはとても簡単なことで、「丸投げをしない」ということです。プロジェクトを立ち上げて、社内では不足しているリソースを補うために外部会社に依頼するのは問題ないです。ただ、その全体を掌握している・コントロールする立場は、社内のメンバーが行うべきです。そうすれば、仮に運用後に「想定していないケースが発生した」といった場合でも、内部で解決できるだろうし、少なくとも「ブラックボックス化」はしていないので、何かしらの解決方向を見出すことはできるでしょう。

自社でわからないこと・解決できないことは、他社や業界の事情を掌握している外部会社がどんなに主体となっても、解決などできるわけがないのです。外部会社は、解決のためのリソースの一つに過ぎないという認識が社内で一致していなければ、そのプロジェクトによる何らかのシステムや制度の導入は成功しても、運用にたえられるものではないでしょう。

研修プログラムでも同じことが言える

これは、研修プログラム開発であっても同様です。ファシリテーターを外部コンサルティング会社にお願いするケースは多いでしょう。ファシリテーションは外部であったとしても、その研修を実施する目的やそれによって期待する成果といったものを考え、それとコンテンツが合致しているか、そうでなければ何をカスタマイズすればよいのかを決めるのは、研修を依頼した会社側です。ファシリテーターが突発的な事情で来れなくなったら、代打でファシリテーションできます!くらいの関与度合いがなければ、パッケージコンテンツを売りつけられるだけで、何のための研修なのかわからなくなります。

たしかにそうだけど、そこまで社内にリソースは無いから・・・という会社は、是非ともお問合せください。一緒に解決策を考えましょう!

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