アトランタで開催されていたATD2017も終わってから1週間ちょっとが経過しました。エビングハウスの忘却曲線いわく、「記憶は1週間経過すると77%が忘れてしまう」と言われています。忘れないうちに、復習しつつ記録に残しておきたいということで(笑)。
ATD2017では、「Learning Measurement & Analytics(研修の効果&分析)」のトラック(カテゴリー)には多く出席しました。14コマのうち6コマが該当し、私自身とても関心が高く、かつ仕事にも役立てたいと思う内容でもあります。出発前にセッションの選定をした時点で、既にその傾向は明確にあらわれておりました。
今回は、「研修の効果および分析」についていくつか受講したセッションからわかったことを、複数回にわけてご紹介したいと思います。
余分なお金をかけずにシンプルに効果を図る
CEOは研修によるビジネスインパクトやROIを知りたいと思う傾向が高い一方、それを実際に提示しているL&Dプロフェッショナルはとても少ないそうです。そもそも、研修の効果を図る目的は、ステークホルダーが誰なのかを明確にした上で、ROE(Return of Expectation:期待に対するリターン)を示すことが重要です。「ROEを示す」とは、研修の有用性と信頼性を示すことです。そのために、全ての情報を示す必要があるわけではないようです。
初日(5/21)に受けた「SU101 Demonstrating Training Effectiveness: How to Make This Bane Into a Boon」は、カークパトリックの評価4段階をベースに、余分なお金をかけずに、かつシンプルにできる効果測定方法を紹介したセッションでした。
- Level 1: Reaction (研修満足度:受講者の満足度の評価)
- Level 2: Learning (学習到達度:知識の修得度の評価)
- Level 3: Behavior (行動変容度:行動変容の度合いの評価)
- Level 4: Results (成果達成度:業務向上の度合いの評価)
Level 1:スマイルシートからの脱却
研修実施後のアンケートは、回収に手間と時間がかかるうえ、その後の集計や分析などにも時間を費やすことになります。オンラインで行うにしても、それが難しい環境下にあるかもしれません。それならば、研修会場に模造紙を貼って、そこに直接書けるようにすればよい!という方法を紹介されました。
これならば、研修が終わった時に受講者に記入してもらうだけで完了し、この模造紙を回収すれば終わりです。実際、このセッションの評価に関しても、会場の柱に模造紙がはってあったので私も評価を記入してきました。
Level 2: プレ・ポストテストからの脱却
事前・事後テストといった手法はコンプライアンス研修などでは有益です。ただ、そういったもの以外の場合は、「復習をすること」に重きを置くことが重要です。例えば、以下の方法で行うことが考えられます。
- ロールプレイングを行う
- 研修の様子を写真や動画でまとめる→関係者がみられるように配布/配信する
- (研修で使用した)フィリップチャートを写真にとり→写真のサマリーをまとめ→その写真をステークホルダーや参加者におくる
ポイントは楽しむ!ということと、「Rethink(見直す)→Reuse(再利用する)→Reduce(減らす)」(←エコロジーの視点と同じだと思いました)だそうです。この手法は、マイクロラーニングにもつながっているなと思います。
Level 3: 学習を定着させることにフォーカス
Focus on making Learning Stick(学習を定着させることにフォーカスする)に重きをおきましょう。以下の方法が考えられます。
- 研修後に一緒に昼飯をとる
- 6か月後にフォローアップセッションを行う
評価よりも、(受講者に)何が起こったか、仕事上での挑戦や達成を確認したり、観察することにフォーカスすることだそうです。受講者による自己モニタリングも有益です。必要に応じて、上司によるコーチングやフィードバックもあるべきかと。
Level 4: 統計ではなく動向を把握
ずばり、ステークホルダーの声を聴くことだそうです。それなら、比較的簡単かもしれません。もちろん、いきなり聴いても答えられないかもしれないので、研修を始める前に話しておけばよいだろうし、それが「ステークホルダーを巻き込む」ことになるでしょう。
この際に、Level3で得た内容をまとめたものやデータなど用いたレポートを提示すれば、よいでしょう。どんなレポートがよいのかというのは、別のセッションで話されていたので、それは次の機会にしたいと思います。
*画像は私が撮影した2017年ATDの一コマです。