アトランタで開催されていたATD2017も終了し、私も昨日(5/26)帰国しました。今回は事前の準備も、(私としてはしっかりと)行っていたこともあり、充実かつハードな4日間でした。現地での滞在様子はこちらを。
今回は、Microlearning(マイクロラーニング)について取り上げたいと思います。どんなセッションに参加するのか検討していた時に、キーワードとしていたものです。
ATD2017のBuzzword(バズワード)
もともとマイクロラーニングのコンセプトは、昨年のATD2016でも取り上げられており、その実例なども紹介されていました。私も昨年8月に自分自身のマイクロラーニング実践例というようなことも、このサイトで記事としてあげていました。
また、オランダのラーニングプラットフォームを提供しているaNewSpring社が、ATD2017におけるBuzzwordを選ぶTwitter上でのアンケートを行った結果、「Microlearning」は1位でした。それだけ、人材開発関係者にとっては注目すべき手法・考え方として認識されていると言えます。
What will be the most popular buzzword(s) at #ATD2017
As an added @anewspring benefit pre-order our ATD slidedeck: https://t.co/aRGs7Z8myz
— aNewSpring (@aNewSpring) May 20, 2017
ATD全体でマイクロラーニング推し
さらに後押しするような出来事が、ATD2017で発生しました。それは、ATD CEOのTony Bingham(トニー・ビンガム)氏が、2日目(5/22)のキーノーツスピーチの「前座」としてスピーチをしたのですが、その時に「マイクロラーニング」をこれでもか!というくらい強力に推していたのです。
- 経験をすぐに共有できる。
- 38%の企業がすでに使っている。41%は近い将来導入したいと思っている。
- モバイルはBIG Enabler
- IBM社:デジタルプラットフォーム(Your Learning)
- Newport News Shipbuilding社:技術的なtips、ハウツーをその場で学習して仕事に反映させる
- 短いパーツ(Short Piece)がパフォーマンス改善に貢献できる
- Cisco社は2019年までに3/4をビデオ系の研修にするらしい
- Agile(アジャイル)の発想が必要
- Action steps for Microlearning(マイクロラーニングのためのアクションステップ)
- think forward
- think outside the classroom
- be agile in your learning design
- keep content short
- address tech and successfully needs early
- get your leader’s support
彼のスピーチに関して、私が書き留めたメモを読み返すだけでも、これだけ明確に推奨しているのは驚きです。実際、この日の夜に行なわれたツアーメンバーとの情報共有会でも、「これにはどんな意図があるのか」といったことなどで盛り上がったことは言うまでもありません。
マイクロラーニング関連のセッションも大盛況でした。私は、「SU300 – Microlearning: The New “Shiny Penny”」「TU302 – Microlearning in Microtime: Creating Just-in-Time Learning」「W314 – Making Microlearning Work at Work」という3つのマイクロラーニング関連のセッションに参加したのですが、どれも満員でした。(←予備校の人気講師の講習並みでした・・・)
Microlearning(マイクロラーニング)とはなにか?
そもそも、マイクロラーニングとは何でしょうか?いくつかのセッションでも、マイクロラーニングの定義がされていました。
Micro-learning is short bursts of focused “right-sized” content to help people achieve a specific outcome. (マイクロラーニングとは、限定された成果に達成するのに役立つ、焦点を絞った「ちょうどよいサイズ」のコンテンツのことです。)
<TU302 – Microlearning in Microtime: Creating Just-in-Time Learning>より
- Anything that can be consumed in 5 min or less.(5分以内でできる何か。例えば以下のもの)
- 5 min of video or eLearning(5分以内のビデオやe-ラーニング)
- 5 pages of text(5ページ程度のテキスト)
- 1 medium-sized infographic(標準サイズの情報画像)
<W314 – Making Microlearning Work at Work>より
どちらの定義も抽象化しているか、具体的に示しているのかの違いで、同じことを意味していると理解しました。また、一つ一つのマイクロラーニングコンテンツは独立しているというか、その一つだけで完結していることがとても重要だそうです。「Not Chunking、Not Continuation、Not Breaking Down Docs(大量ではなく、続編もなく、文書を分割することもしない)」というのが原則です。
そのため、トピックスも対象者も限定したものになるはずだし、そうあるべきなのかマイクロラーニングです。複数のスピーカーが自分なりの言葉でそのようにおっしゃっていました。
学ぶことが目的というよりも、「How will I improve performance?(どのようにパフォーマンスを改善するのか?)」が重要なので、受講時間も「できるだけ早く仕事に戻れるくらいの短さ」となります。
コンテンツ/プラットフォームは多種類にわたる
コンテンツは多種類にわたります。「潜在的な顧客を見つけるための5つの方法」といったブログ記事や、Youtubeの動画もマイクロラーニングのコンテンツとも言えるのです。そういう意味では、「マイクロラーニングを知りたいと思う方をターゲットにした、マイクロラーニングに関する記事」として、この記事もマイクロラーニングのコンテンツとなるわけです!
当然、プラットフォームも多種類となります。以下のものが例としてあげられます。
- LMS(例:Cornerstone, Sabaなど)
- ナレッジマネジメントシステム(例:シェアポイントなど)
- サードパーティーツール(例:UMUなど)
- 企業内SNS
- インターネット
- モバイルアプリケーション
コンテンツには素早くアクセスできなければ意味がないとのことです。適切なプラットフォームが選ばれるべきであり、「何がマイクロラーニングのテーマなのか」によって変わってくると思います。「一つのパターンがすべてにあてはまるわけではない」とのことです。
形式ではない。早く作りリリースして修正する
上記のように、大まかな定義はあるものの、「これがマイクロラーニングだ!」というガッチリとした型・作法は無いと言えるでしょう。どのセッションでもおっしゃっていたのが、「早くリリースすること」「一度リリースしたら終わりではなく、修正すること」「フォーマットではなく、メッセージの力(コンテンツの中身)」だそうです。
従来のe-Learningだと、コンテンツを開発するのに時間がかかるだけではなく、そのコンテンツを修正するのにも時間・費用がかかるため、修正されることは少ないでしょう。
そのため、だんだんとe-Learningのコンテンツが「実務と乖離する」「実務に役立たない」ものとなってしまい、使われなくなることがありました。その辺のe-Learningのデメリットを解決させたのがマイクロラーニングとも言えます。
既にMILE(MIcroLEarning Design Model)とよばれる、マイクロラーニング用の開発モデルがあるようです。ただ、これも特段今までの研修プログラム開発モデルと異なったものではなく、「PDCAサイクルを実行し、(結果や状況の変化に応じて)修正しつづけること」を意味しています。
マイクロラーニングを導入したPitney Bowes社では、4500以上のビデオがすでに存在し、社員の91%が「とてもフレンドリーなプラットフォームだ」と評価しているようです。
L&Dプロフェッショナル(Learning&Developmentプロフェッショナル)の役割も、マイクロラーニングによって変わってくるでしょう。トレーナーからナレッジマネジャー・キュレーターとしての役割を求められるはずです。この辺の内容は別の記事で扱いたいと思います。
また、マイクロラーニングを含む研修体系を見直したい、これを機に人材開発の仕組みをつくりたいと思われたら、サービスメニューをご覧いただきご連絡ください。
*画像は私が撮影した2017年ATDの一コマです。
<2019年8月2日追記>
ATD2019ではマイクロラーニングをどう活用するのか、その実践結果から得たことなどが共有されていました。